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◇◇
「…で、この公式をここに応用すると…」
窓から入り込むぬるい風が、カーテンを揺らす。
外では日がかんかんに照っていて、今日も相変わらずの猛暑のようだった。
グラウンドで運動をする学生達の声と、ホイッスルの音とが、時折聞こえてくる。
「……三角形ABCとCDEの面積比は…」
何だか、頭がふわふわする。
壇上に立ち、教科書を手に問題の解説をする先生の声も、頭に入ってこない。
やはり、昨日のことがあって、疲れているのだろうか。
右手にペンを持ち、左手で頬杖をついて、ぼんやりと前を見つめながら、そんなことを考える。
“……シイ”
ーーふと、自分の左手から声が聞こえた気がした。
顔を上げ、左を見てみるけれどーー誰もいない。
それもそのはず、自分は一番後ろの窓際の席で、左に人は居ないのだから。
何だか怖くなり、手元の教科書へと目を落とす。
ちらりと右を見てみれば、逢坂は頬杖をついてうとうとしながら、眠たそうに目を薄く開けている。
“…サビシイ、ネエ、サビシイノ…”
また、声が聞こえた。
今度は先程より、もっと近くで。
それもまた、左から。
直感的に分かった。
これはーー霊だと。
そう認識した瞬間ーー酷い頭痛に襲われた。
すぐに、背中を強く押される感覚と、何かがずるりと入ってくる感覚とが、同時にやってくる。
やばい。
取り憑かれたかも。
隣の逢坂に助けを求めようにも、もう自分では声も出せず、指一本動かすことが出来なかった。
“モット……”
まだ若い女の子の声が、頭の中で反芻する。
そこで、ふっとーー意識が途切れた。
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