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「一応は祓ったから、もう大丈夫だとは思うけど……」
逢坂はベッドの隣の椅子に腰掛けたまま、そっとこちらに手を伸ばしてくる。
何をするのかと思えば、伸ばされた手は自分の頭に触れて、そっと前後に動き始めた。
「…ん…」
直ぐに、撫でてくれているのだと分かった。
その手付きはやっぱり優しくて、心地よくて、とろんとしてしまう。
けれど、子供扱いされているようにも感じて、何だか少し複雑だった。
「…ねえ、林野君」
ふと、逢坂の手が離れる。
何かと顔を上げれば、細められた灰色の瞳と、目線がぶつかって。
「俺に隠してること、ない?」
「…っ」
ーーどくん、と心臓が跳ねた。
心の奥底を見透かされたような質問に、動揺しつつも、なんでと努めて平静を装いながら聞いてみる。
逢坂は目線を俺から逸らさず、僅か眉を顰めた。
「…霊気が、濃くなってる」
「…れい、き…?」
逢坂は頷いて、首元に掛けていたネックレスを外し、鈴を取り出した。
「…見てて」
そう言うと、逢坂は持っていた鈴を、俺の身体にゆっくりと近付けていく。
そうして身体と鈴との距離が、10センチくらいになった時ーー突然、鈴がばちんと弾き飛ばされたのだ。
まるで、鈴と自分との間にある見えない壁に、跳ね返されたかのように。
また、磁石の同極同士が、反発したかのように。
衝撃に、逢坂は眉を顰めながらも、ね、と言わんばかりに俺を見る。
「…少しの霊気なら、この鈴が跳ね飛ばすことが出来る。けど、君みたいに余りにも強い霊気を纏っていると、反対に鈴が跳ね返されるんだ。近付けることさえ出来ない」
余りに非科学的現象であるために、中々目の前の出来事を、信じることは出来なかった。
けれど、昨日は近付けられても反発しなかったのに、どうして今日は反発するのだろうか。
その疑問を逢坂にぶつけてみると、逢坂は小さく頷いた。
「…そう。それが、俺も疑問に思ってるところなんだ。昨日の君の霊気は少し濃かったけれど、でも気になるようなものでもなかった。ところが今日朝会った時……君の霊気は、驚く程に濃くなっていた」
だから、と逢坂は続けた。
「もしかして昨日……何かあったんじゃないかって」
「……」
何もないと言えば、嘘になるだろう。
昨日起こったことといえば、アレしかない。
ちゃんと、伝えるべきだ。
…そう、思うのに。
「……っ」
言えない。
霊と毎夜、交わっているだなんて。
言ったらきっと、軽蔑や嘲りといった感情を向けられることは目に見えている。
ーー逢坂に、嫌われたくない。
その一心から、かぶりを振った。
「…ごめん。心当たり…ない」
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