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「…な、んで……」
「……林野君。離れないでね」
ーーさっき、逢坂が祓ってくれた筈じゃ。
恐怖の中、必死に、縋り付くようにして、逢坂の制服を掴む。
逢坂は張り詰めた表情で、目の前の虚空を眺めていたかと思うと、すっと鈴を体の前で構えた。
灰色の瞳が、すうっと眇められる。
「…清浄なる銀鈴の音色よ」
“ア゛アァァアアッ”
逢坂の声と共に、鈴の音が辺りに響き渡る。
女はその度に、濁った声で叫んだ。
「怨に憑かれし魂達を」
“イヤ、イヤァァアアッ‼︎ヒトリニシナイデ‼︎”
叫ぶ女の声が、余りにも悲痛で、耳を塞ぎたくなる。
ーーこんなにも苦しそうなのは、きっと現世に未練が残っているから。
それを、未練を残したまま、祓ってしまっていいのだろうか。
そんなことをしても、霊は、この人は……救われない。
死してなお、怨念と憎悪の念に駆られたまま、一生苦しみの中でもがくことになるのではないか。
…そう思うと、胸が締め付けられるように痛んだ。
対して逢坂は、額に薄っすらと汗を浮かべながらも、涼しげな表情をしていた。
「……っふ」
逢坂が、トドメだと言わんばかりに、鈴を振る。
ーー本当に、これでいいのか。
最初からこの人を悪と決めつけて、無理矢理祓って。
逢坂が祓うことで、結果的にこの人は、更なる苦痛に苛まれることになるかもしれないのに。
自分は、それを見ているだけで、いいのだろうか…。
「現世の呪縛から解き放ち、天上へと」
「ーー駄目だ、逢坂…!」
ーーいいわけ、ない。
気が付けば、逢坂の手を掴み、その声を遮っていた。
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