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「…勝手なこと、しないでほしいんだけど」
きっと目を細めて睨まれ、ぐ、っと手首を掴む手に、爪が食い込むほど力を入れられる。
痛くて微かに涙が滲んだけれど、耐えて、負けじと逢坂を睨み返す。
「勝手って……俺が何しようと、俺の勝手だろ」
「…勘違いするな。君と俺は、昨日契約を交わした。君の身体はもう、君だけのものじゃない。俺のものでもある。…危険に自ら飛び込むなんて、許さない」
「……俺は、自分がとった行動は間違いじゃないと思ってる。…今も、それは変わらない」
「………っ君は」
逢坂は手を解いたかと思うとーー直後、俺の胸倉を掴んだ。
ぎゅ、っと強く締められ、息が出来なくなる。
「…あ、っう……」
「君は、自分の命を犠牲にしてまで、あの霊に助ける価値があるっていうの⁉︎」
「お、さか……苦し…」
「あの子は君に取り憑いて、その身体を奪おうとした。彼女の苦しみなんて、関係ない。その行為は人間にとって、紛れもない悪でしかない…!」
逢坂はそう一息に言った後、ぱ、っと俺の襟を離した。
途端に、俺はその場に膝から崩れ落ちて、突然入ってくる酸素にげほげほと噎せる。
逢坂はそれを冷ややかな目で見つめて、それからくるりとこちらに背を向けた。
「…君が死のうと死ぬまいと、俺には関係ない。けど、約束は守ってもらうよ。もし君がまた危険を犯そうとするのなら、君に利用価値がある間は、俺は全力で君を阻止するから」
そう言うと、逢坂は校門へ向かって歩きだした。
その背中を見つめながら、締め付けられるように痛む心臓を、服の上から抑える。
『利用価値』
ーー分かっているつもりだった。
けれど、言い放たれたその言葉には、自分を酷く傷つけるには十分なほどの、むごい響きが含まれていた。
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