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「…はぁ」
気にしないようにしてたのに、母のせいで思い出してしまった。
『君に利用価値がある間は』
『は、綺麗事言わないでよ』
一度意識してしまえば、さっきの逢坂の台詞がぐるぐると頭を回って、離れなかった。
逢坂が危険を承知で俺を守ってくれるのは、自分に利用価値があるから。
…そんなの、分かってたつもりだったのに。
逢坂があまりに優しくしてくれて、自分を二の次にしてまで心配してくれるから、少し勘違いしていたのかもしれない。
逢坂が、自分自身を守ってくれているなんて。
逢坂にとって、自分はただの道具でしかないというのに。
「……っう」
ーー苦しい。
胸が、張り裂けそうに痛い。
終始柔らかく笑っていて、優しくて。
けれど、やらなきゃいけない時は真剣な表情になって、軽やかな手さばきで相手を薙ぎ払う。
そんな二面しか知らなかったから……怖かった。
あの怒号も、氷のような冷酷な目も。
自分が知っている逢坂とは、全く違っていて。
「ーー…やめた」
考えれば考えるほど、心に傷が出来ていくような気がして、思考を止める。
今一人で考えても、きっと結論なんて出ない。
そこで、高坂に電話してみることにした。
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