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◇◇
「あら、…なに、色々吹っ切れたみたいな顔して」
「…っぶ」
家族三人で食卓を囲み、夕食を食べている最中。
白いご飯を口に入れた途端ーー母の言った一言に、驚いて盛大に噎せる。
ぼろ、っと口から溢れた何粒かのコメを急いで掻き集めながら、若干の恐怖さえ覚えて、母を見上げる。
「…っな、なんで…」
なんで分かるんだろう。
ここまでくると、ちょっと怖い。
……もしかして、エスパーなのか。人の心が読めるのか?
だとしたら、自分の周りエスパー多すぎないか。
母も、逢坂も、高坂も。
自然と、自分の思っていることを言い当てられてしまう。
「ふふ、涼太の顔見てたら大体分かるの」
「……そんなに俺、分かりやすい…?」
「うん。だって涼太、すぐ顔に出るんだもの」
「うそ……」
自分ではそんなつもり、全然ない。
むしろ、なるべく抑えているつもりなのだけど。
分かりやすく落胆している俺を見て、母さんがくすりと笑う。
「…きっと、お父さんに似たのね。お父さんも、涼太に負けず劣らず、分かりやすいから」
「…そ、そんなことないぞ」
父が、飲んでいたビールを危うく吹き出しそうになりながら、慌てて言う。
母はその様子を見ながら小さく笑って、父の顔を指差した。
「今だってほら、少し不機嫌そうな顔してる」
「…う」
父は、母の言葉に決まりが悪そうに俯く。
「……でもね」
そんな父の手を取り、母はにっこりと笑った。
「…貴方のそういう所も、好きなのよ」
「か、っ母さん……」
父の顔が、ぱっと明るくなり、その頰が分かりやすく赤くなる。
「……はぁ」
ーー自分は一体、何を見せられているのだろう。
何だか気まずくなって、ご飯を急いでかきこみ、わざと大きな音を立てて席を立つ。
「…ご馳走さま」
が、どうやら両親には聞こえていなかったようで、二人は完全に自分達の世界に入っているようだった。
仲良くするのは大いに結構だけど、子供のいる前でやらないでほしい。
そんな思いから、自分の使った食器をキッチンで洗い終わった後は、すぐさまシャワーを浴びに洗面室へと飛び込んだ。
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