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◇◇
次の日の朝。
若干の緊張を覚えながら、教室の扉をカラカラと開ける。
途端に耳につく喧騒の中、一人窓際に座っている逢坂がいるのを確かめてから、ゆっくりと教室の中へと入ってゆく。
そうして、自分の席まで辿り着くと、リュックを椅子にかけ、ちらりと逢坂の方へと目をやる。
相変わらずの猛暑で、教室の中はじめじめと暑いというのに、逢坂は涼しげな表情で、静かに本を読んでいた。
表題は……『猫と私』。
聞いたことも、見かけたこともない本だ。
どういう話なのだろう。
「……あのね、あんまりじろじろ見ないでくれるかな」
「…っ!…ご、ごめん…」
気付けば、じいっと見つめてしまっていたみたいだ。
逢坂は僅か眉を顰め、ふうっと息を吐き出すと、読んでいた本をぱたんと閉じた。
……どうしよう、怒らせてしまっただろうか。
と思っていたのだが、意外にも逢坂はこちらをくるりと向き直ると……にこ、っと笑いかけてきた。
「…おはよう、林野君」
「…え、あ……おはよう…」
何だか、拍子抜けしてしまう。
こっちは、学校に来る途中も、まだ怒ってるだろうか、とか、無視されたらどうしよう、とか色々考えていたのに。
それなのに逢坂は、何事もなかったかのように、笑みを讃えて挨拶をしてくる。
いや、逢坂が気に留めていないのなら、それはそれでいい。
本当は朝会ったら、あのことについて話そうと思っていたけれど……気にしてないのなら、話す必要はないだろう。
わざわざ、蒸し返すべきじゃない。
「……あれ、君……」
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