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「え…」
ふと、逢坂が不思議そうに、こちらの顔を覗き込んでくる。
「……お、逢坂…?」
……かと思うと、ゆっくりと顔を近づけてきて。
慌てて距離を取ろうとしたのだが、至近距離からその綺麗な灰色の瞳に見つめられると、何故か動けなくなってしまう。
近くで見ると、逢坂の肌は透き通るように白くて、きめ細かくて、すごく綺麗だ。
それに茶色がかった髪も、さらさらとしていて艶があり、とても男の髪とは思えない。
しかも、そのシャツからは、仄かな柔軟剤のいい香りまでする。
「……」
「……っ」
そんな無言で、しかも至近距離から、俺を見つめないでほしい。
その瞳を見ていると、吸い込まれそうになって、妙に心臓がバクバクする。
身体も、何だか熱くなってくる。
「…林野君」
ああ、このまま見つめられていたら、膝から溶け落ちてしまいそう……。
「ーーひゃっ」
なんてぼーっと考えていたのも束の間、突然頰を親指と人差し指とで摘まれ、変な声が出てしまう。
「ひゃ、ひゃに……⁉︎」
「…何を隠してるの、俺に」
「…へ…?」
さっきとは打って変わり、逢坂は俺の頰を摘んだまま、瞬き一つせず、真剣な顔でこちらを見つめてくる。
「…君の霊気が、昨日よりも薄くなってる。…昨日は半々だったのに、今日は生気の方が濃い」
「…えっ……?」
「…教えてよ。それ、誰に貰ったの?」
「……ひ、ひょっと待っへ…!どういうこと…」
ーー霊気が薄くなって、生気が濃くなってる…?
どういうことだろう。
隠しごとをしてるのは確かだが、でもそのことについては、本当に心当たりがない。
昨日起こったことといえば、あの女の子の霊と和睦したことくらいで。
「ーーとぼけないで」
「…‼︎ い、っ……」
きゅっと両頬を引っ張られ、地味な痛みに思わず声をあげる。
「ひょ、いひゃいって……!」
「…言っておくけど、君が教えてくれるまで離すつもりないから」
「……は…?ふざへんなよ、はなへ……!」
何とか精一杯の抵抗を試みるものの、逢坂は一向に、その手を離してくれる様子はない。
ーーていうか、さっきから周りからの視線がすごい。
主に、女子達からの。
…これ以上、注目されたくない。
かといって、心当たりのないことを話せと言われても、何を話せばいいのだろう。
逢坂と別れた後……つまり、昨日の夕方から今朝にかけてあった出来事を、全て話すべきだろうか。
でもそうなると、必然的に、あの事も話さなければならなくなる。
それはーー避けたい。
心の中で葛藤していたその時、チャイムの音が学校内に鳴り響いた。
そして、それと同時に教室のドアが開き、担任が入ってくる。
ーー良かった、助かった。
「…はぁ」
その音に、逢坂は一つ溜息をつき、俺の頰からぱっと手を離すと、耳元で囁いてきた。
「……必ず、洗いざらい吐いてもらうから。覚悟しておいて」
「……っ」
ーーどうしよう。
言うべき、なのだろうか。
でも、軽蔑の目を向けられたくない。
嘲りの表情を、見せてほしくない。
嫌われたくない、出来るならもっと、仲良くなりたい。
あいつにとって自分は、『利用価値のある』存在なのだろう。
けれど俺は……逢坂のことをそんな風に思いたくはない。
ただ純粋に、知りたい。
彼のことを、もっと。
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