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◇◇
「涼太さ、最近あいつと仲良いよな」
真向かいでパンを頬張りながら、高坂がそんな事を話題にあげる。
あいつって、と聞き返せば、高坂はちらりと左に視線を動かして、ほらあいつだよ、とその先の人物を顎で指し示す。
自分もそれにならい、左へと目をやると……目に飛び込んできたのは、女子達の輪。
その中心に立っているのは、困ったように眉尻を下げ、どうしたらいいのか分からない、といった風に戸惑っている、逢坂だ。
「…ああ、まあな」
「まあなって……お前、ああいうのと付き合うタイプじゃないじゃん。なんで、仲良くなったの?」
「それは……」
どうしよう。
なんて答えれば。
馬鹿正直に、霊のことを通じて付き合うようになった、なんて言ったら、頭がおかしい奴だと思われるかもしれない。
…よし、ここは無難に。
「あいつとは、趣味がたまたま一緒だったからさ。それで、意気投合して…」
「…趣味?趣味って、何?」
訝しげに聞いてくる高坂に、咄嗟に頭に浮かんだ言葉を、慌てて口にする。
「えっと……そう、オカルトだよ、オカルト!お前には隠してたけど、俺結構そういうの好きでさ!心霊スポット行ったりとか、廃墟巡ったりとか、よくやってんの」
ーーやってしまった。
盛大なウソをついてしまった。
本当は、心霊スポットに行ったことも、廃墟を巡ったことも、一度もない。
むしろ、そういうのは苦手な方だというのに。
オカルト、という単語が苦し紛れに出て来た言葉であったにせよ、それが趣味だなんて、少しやばい奴だと思われたかもしれない。
「ふぅん……オカルト、ねえ…」
…流石に、怪しまれただろうか。
高坂は少しの間考え込んでいたかと思うと、ふっと顔を上げ、にやりと笑った。
「…面白そう。俺も、わりと好きなんだよ、そういう系。よし、今度一緒に、心霊スポット行こうぜ」
「えっ……ああ、うん…」
意外にも、高坂は訝しむことなく、むしろのってきた。
まさか高坂が、そういうのが好きだったとは。
あっちから誘ってくるなんて、予想外だ。
ーーその誘いに流れで頷いてしまったが、心霊スポットなんか絶対に行きたくない。
ただでさえ、この身体は霊を引き寄せるというのに。
霊が集まる場所なんかに行けば、どうなるかは分かりきっている。
そうは思ったけれど、表面上ではそういう訳にもいかず、ぐっと堪えて頷く。
まあ取り敢えず、なんとか信じてもらえたみたいでよかった。
「…決まりだな。じゃ、逢坂にも声かけておいてくれ。俺、どこがいいか調べておくから」
「…え、逢坂も?」
「……ああ。行くなら二人より、三人の方が面白いだろ」
「…っそ、そうか…?」
なんで高坂、いつになく乗り気なんだよ。
「…頼んだぞ、涼太」
ぽん、と肩を叩かれて、断ることが出来ない雰囲気になってしまった。
どうしよう。
このままじゃ、本当に行くことになってしまう。
「…わ、かった……」
ーーどうか逢坂が、忙しくありますように。
そう願いながら、まだ女子達に囲まれている逢坂をちらりと見て、お弁当箱に詰められた白米を飲むようにかきこんだ。
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