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◇◇
「……じゃあ、俺こっちだから」
微笑み、くるりと背中を向けて歩き出した彼の背中を見ながら、小さく手を振る。
「また、……明日」
そう呟いて、自分も家へと向かう道に、ゆっくりと一歩を踏み出す。
が、込み上げてくる複雑な思いから……一度、振り返ってしまった。
ーーもう少し、側にいたい。
彼といると、澱んだ自分の心が、澄んでいくような気がする。
膿のように溜まった憎しみが、どす黒い感情が、溶けていくような気がする。
けれど同時に……近付きたくないとも思ってしまう。
自分が側にいると、あの綺麗な心を汚してしまいそうで、怖い。
それに、妬ましくなるのだ。
自分とは違って、あまりにも白くて綺麗だから。
「ーー……っ!」
ふと、背後から強い霊力を感じて、反射的に振り向いた。
がーー怪しそうな人物は、誰もいない。
それに、感じた強い霊力も、一瞬のうちに消えてしまい、もう感じ取ることは出来なかった。
……気のせい、だったのだろうか。
軽く辺りを見回してから、止めた歩みを再開する。
ーー後ろで自分を、建物の陰に隠れて見ている人物がいるのにも、気が付かずに。
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