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◇◇
それから、時はすぐに過ぎ去り。
あっという間に、その日はやってきた。
憂鬱と高揚とが入り混じった気分を抑え、約束した時間の45分前に家を出る。
ここから学校までは、三十分と少し。
大丈夫、充分間に合う。
「……あれ」
ふと、道端に咲いていた小さな花に、目が止まる。
別段花に興味はないのだがーーどうしてだろうか、立ち止まって近くでその花を見たい衝動に駆られた。
その衝動のままに、近付いていってしゃがみこみ、花に目を向ける。
薄い紫色をしたその花は、美しくて可憐で、見ているとどこか、吸い込まれそうになるような感じさえ覚える。
ありふれた、どこにでもある花のように見えるのに、何故こんな風に感じるのだろう。
そうは思いつつも、思わず目をとられ、少しの間ぼーっと見惚れてしまう。
「ーー危ない!」
「…え」
突然、背後から大きな声が聞こえて。
それとほぼ同時に、右手を掴まれて、横に引っ張られる。
次の瞬間ーー自分の元いた場所から、ガシャンと陶器が割れるような音がした。
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