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が、ふと空を見上げてみてーー一旦落ち着いたはずの心臓が、再び大きく跳ねた。
何も、ない。
見渡す限り、マンションも、高層ビルも、何も。
……だとしたら。
「…っ」
背中を、嫌な汗が伝う。
さっき落ちて来た植木鉢は一体、どこから……?
『…気を付けた方がいい。君、狙われてるから』
いつかの逢坂の言葉が、脳裏に蘇る。
「おう、さか……」
無意識に、その名前が唇から零れ落ちる。
ーーどうしよう、動けない。
普段通りに戻ったはずの呼吸が、また早く、浅くなってゆく。
額に冷や汗が滲んで、唇がはくはくと震える。
「…は、…っぁ、あ…」
隣を横切る人達の視線が、突き刺さる。
けれど誰も、手を差し伸べてはくれない。
皆忙しそうに、横を通り過ぎていくだけ。
背中をさすって、大丈夫ですかと聞いてくれるだけで、それだけでいいのに。
ーーこんな時、逢坂が隣に居てくれたら。
きっと、優しく囁いて、そっと頭を撫でてくれて。
『…林野君』
柔らかく微笑みながら、名前を呼んでくれる。
「ーーあれ、君…」
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