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頭がぐちゃぐちゃで。
胸が張り裂けそうに痛くて。
どうしたらいいのか、分からない。
ーー気付いた時には、涙が頬を伝っていた。
逢坂が困惑したような表情を浮かべて、おろおろしだす。
「どうして、泣いてるの…?」
…自分でも、よく分からない。
ただ、こみ上げる複雑な感情が胸をぎゅっと締め付けて、それに呼応するようにして、勝手に涙が溢れる。
「………もしかして、俺の…せい?」
違う、そういう意味を込めて首を横に振れば、逢坂は益々困ったような表情に変わる。
…早く、この涙を止めないと。
そう思う一方で……もっと困らせたいなんて、思ってしまう自分がいる。
「…泣かないで。……泣かれると、どうしていいか分からなくなる」
この台詞、前にも聞いたことがある。
屋上で絶体絶命になったところを、助けてくれた時。
あの時も、子供みたいに泣く自分を、そっと抱き寄せて、落ち着くまで側にいてくれたっけ…。
「…ああ、そうだ」
ふと、逢坂が声を上げた。
驚きつつもその顔を見れば、悩ましげな顔から一転、笑みが浮かんでいる。
「…ね、君は甘いものは好き?」
「甘い、もの……?」
その質問にどんな意図が込められているのか分からなかったけれど、取り敢えずこくりと頷けば、逢坂は良かった、と微笑む。
「じゃあこれから、二人で甘いものでも食べに行かない?高坂君との約束は、また今度にしてもらって」
「え……っでも…」
行きたい、けれど。
それは余りにも……高坂に悪いんじゃないか。
そう思い、返事に困っている俺に、逢坂は声をワントーン低くして、耳元で囁く。
「……今日はやめた方がいい、危険すぎる。情緒が安定しない時ってね、霊に憑かれやすくなるんだ。そんな状態で心霊スポットなんか行ったら……最悪、身体を乗っ取られてしまうかもしれない」
「……っ身体、を…」
この身体を、霊に乗っ取られる。
つまり、この身体が自分の意思じゃ動かせなくなると言うことだろうか。
考えるだけで、ぞわりと背中に悪寒が走る。
「…ね、そうしよう?」
「………分かった」
高坂への罪悪感がちくりと胸を刺したものの、結局逢坂の誘いに乗ることにした。
「よし。それじゃ、行こうか」
逢坂が、軽く俺の手を引いて、歩き出す。
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