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そうして歩いて、十分くらいが経った頃だろうか。
自分の涙も引き、大分感情が落ち着いて来たところで……逢坂がピタリとその足を止め、くるりと振り返る。
「着いたよ。ここ」
「え、ここ…?」
そう言って微笑む逢坂の前には、こじんまりとした、いかにも女子ウケしそうな可愛らしいカフェが。
ガラス張りの窓からは、楽しそうに談笑し、携帯でケーキの写真を撮る女性達の姿が見える。
何だか予想していた感じとは違って、少し拍子抜けしてしまう。
こんな可愛らしくてふわふわした感じじゃなくて、もっとこう、小洒落た、カッコいい感じかと思っていたのに。
「さ、行こうか」
そんなことを考える俺を他所に、逢坂は普通に店内へと入っていこうとする。
「ええっ、ちょっ…」
こんな明らかに女性向けのカフェに、男二人で入るのは……流石に、少し気が引ける。
とは言え、せっかく連れて来て貰ったのに文句を言うのは失礼かとも思い、中々言い出せずにいる自分に、逢坂はくるりと振り返って、微笑む。
「女の子から聞いたんだけどね、ここのケーキ、絶品なんだって。テレビで紹介されたり、雑誌にも何度も載ってるとか。ふふ、楽しみだね」
「う…」
ずるい。
そんなにきらきらした目で見られたら……断れない。
ーー結局、逢坂に押されて、流れのままに店内に入ってしまった。
淡い水色の壁、可愛らしい丸いイス、あたりにうっすらと充満した、香水の匂い…。
そんな、“THE 女子”みたいな雰囲気に気圧され、おどおどしてしまっている自分とは対照的に、逢坂は爽やかな笑みを浮かべながら、店員さんとごく普通に話している。
もしかして、こういうところには普段から来ていて、慣れていたりするのだろうか。
なんと思っていると、逢坂が店員さんに続いて歩き出して、あわてて自分もその後を追う。
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