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「では、この席にどうぞ」
そういって案内されたのは、窓際の二人席。
華奢な白い椅子を引き、少し緊張しながらも、そっとその椅子に腰掛ける。
「こちらが、メニューとなっております。お決まりになりましたら、近くの者を及びつけ下さいませ」
「はい、分かりました。……うわ、どれも美味しそう…」
店員さんが持って来てくれたメニューを見て、逢坂はぱあっと目を輝かせた。
その目はまるで、玩具屋さんに始めて来た子供のよう。
「苺たっぷりのショートケーキ、チョコレートムースケーキに……これは、季節限定品のフルーツタルト…。…うーん、どうしよう、迷うなあ…」
悩ましげに眉を寄せて、真剣にメニューを眺めながら考え込む逢坂に、内心少し意外だなあと思う。
甘いもの、好きなのかな。
あまりそういう風には見えないけれど。
「…よし、決めた。季節限定のフルーツタルトにしよう。…君は、どうする?」
「あ……俺?」
逢坂に気を取られていて、全然考えていなかった。
どうしよう。
「えっと……じゃあ、ショートケーキにしようかな」
少し悩んだ末に、無難なショートケーキに決めた。
分かった、と逢坂は頷いて、近くにいた店員さんに声を掛ける。
「このタルトと、ショートケーキを一つずつお願いします」
「あっ……申し訳ございません、もう一度お願い出来ますでしょうか?」
「ああ、すみません、聞き取りずらかったですよね。えっと、限定のタルトと、ショートケーキを一つずつで」
「…っはい、フルーツタルトと、ショートケーキですね。かしこまりました」
注目を聞き、店員さんは一つお辞儀をすると、厨房へと小走りで去っていく。
その後ろ姿を眺めながら、思わずはあっと溜息が漏れた。
すぐに逢坂が不思議そうな顔をして、どうしたの、と聞いてくる。
「いや、……お前、やっぱモテるなあと思って」
「……え、どういうこと?」
「どういうことも何も……」
……気付いてないのかよ。
あの女の店員、誰が見ても分かるくらい、顔を赤らめて、逢坂に見惚れていたのに。
「…別に、気付いてないならいい」
逢坂が、女の人にそう言う目で見られるのは、いつものことなのに。
…少し、苛々する。
こんな些細なことにもやもやしてしまっている、自分に。
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