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「…林野君?」
逢坂の声で、ふと我に帰る。
顔を上げれば、怪訝そうにこちらを覗き込む、逢坂と目が合って。
「あ、……なに?」
「いや、険しい顔してたから……どうしたのかなって」
「ああ、……ごめん。ちょっと…考え事してて」
そんなに険しい顔をしているつもりはなかったけれど、はたから見れば険しく見えたのだろう。
慌てて下がった口角を上げて、無理やり笑顔をつくる。
折角逢坂が連れて来てくれたのだ。
余計なことは考えずに、素直に楽しまなければ。
「……あれ、その手…」
ふと、逢坂の動きが止まり、視線がある一箇所に固定される。
最初、逢坂は不思議そうな顔をしていたがーー数秒の後、はっと驚いたような顔になって。
「……っ見せて」
「え、っ……あ」
どこか切羽詰まったような表情で、くっと右手首を掴まれて、引き寄せられる。
そのまま少しの間、まじまじと俺の手首を眺めていたかと思うと、逢坂はぼそりと低く、押し出すようにして何かを呟く。
「……ごめん、よく聞こえなかった。今、なんて…」
それが余りにも小さくて、思わず聞き返す。
そうすれば手首を握る手に、ぎゅっと力が込められて。
「……逢坂…?」
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