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逢坂の顔が、少しずつ青ざめてゆく。
名前を呼んでみるも、聞こえていないのか、きゅっと唇を結んで押し黙り、反応を返してはくれない。
一体、どうしてしまったのだろう。
こんな、何かに怯えるような表情の逢坂は初めてで、戸惑ってしまう。
暫くの沈黙の後……逢坂の唇から、ふっと息が零れる。
見上げれば、先程とは打って変わり、不自然なほど綺麗に微笑む、逢坂の顔があって。
「…ね、君……誰にこの手を掴まれた?」
「……っ」
ーー怖い。
笑っているのに。
その声は、柔らかいのに。
その言葉の裏に、何か恐ろしいものが隠されているように思えてならない。
「…教えて。誰に、右手を掴まれたの?」
「……っお、男の人、に…」
「…それは、君の知っている人?」
「し、っ知らない人……」
どうして、こんな質問をするのだろう。
全く意図が読めない。
「……知らない男、か。ふうん、なるほどね……」
何が、なるほどなのだろう。
分からない。
唯一分かるのは…逢坂の機嫌があまりよろしくない、ということくらい。
「……取り敢えず、これは消そうか」
逢坂の顔が、手首に近付けられる。
これから一体何をされるのだろう。
全く見当が付かずに、戸惑う自分に、逢坂は優しい声で言う。
「少し、痛いかもしれないけど…我慢してね」
「痛い…?」
俺が、その言葉の意味を理解するより先にーー手首に、何かが触れた。
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