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「…っい、…!」
逢坂が、手首の皮膚を強く吸い上げる。
じゅっ、という水音、ちくりとした小さな痛み、手首に集中していく熱。
恥ずかしい、早くやめて欲しい、そんな風に思う一方で。
どうしてだろう。もっと、もっとと心の奥底で叫ぶ自分がいる。
「……うん、このくらいでいいかな」
逢坂の唇が、手首から離される。
夢心地でいたのに、途端に現実に戻され、慌てて蕩けきった顔を、元へ戻そうとする。
が、一度早くなった脈は中々落ち着かず、顔の熱も直ぐには下がらなかった。
「……林野君」
逢坂が、自分の名を呼ぶ。
顔を上げれば、綺麗な灰色の瞳と視線がぶつかって、下がりかけた熱がまた、急上昇していく。
「…ごめんね、突然。気持ち悪かったでしょう」
……言えない。
気持ち悪いと思うどころか、むしろ少しの陶酔感さえ覚えてしまっていたなんて。
その質問にどう反応していいか分からなくて、押し黙っていると、逢坂がそっとこちらに手を伸ばしてきて。
そのままふわりと頭に手を置かれ、とくんと胸が高鳴る。
「…ごめんね、俺のせいで……君を、危険に巻き込んでしまって」
逢坂のせいじゃない。
そう言いたいのに、逢坂の表情が余りに切なく見えて、言葉に詰まってしまう。
「……ごめん、ごめんね……」
無理矢理浮かべられた笑みが、酷く痛々しく見えて、思わず逢坂から目を逸らしてしまった。
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