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会計を済ませ、店を出る。
相変わらず、外はじめじめとしていて、蒸し暑い。
黙って先を歩き出す逢坂の後を、少し間隔をあけて、ついて歩く。
「……」
互いに無言のまま、周りの景色だけが移り変わってゆく。
いつもなら逢坂といる時間はあっという間に過ぎてしまうのに、今のこの時間はやけに長く感じられる。
ーー逢坂と知り合って、まだ一週間。
当然、逢坂のことについて、まだまだ知らないことが沢山ある。
誕生日、家族構成、過去のこと。
好きな食べ物でさえ、知らない。
所詮、自分が見ているのは上っ面だけなのだ。
一度、表面を覆う薄い皮を剥がせば……きっとそれが逢坂だとは分からなくなってしまう。
それでも、諦めたくない。
今、向き合うことをやめてしまえば、逢坂とは……一生、分かり合えないような気がするから。
「……逢坂」
前を歩く逢坂の手を取って、軽く自分の方へ引き寄せる。
「……え、…」
足を止め、振り向いた逢坂の顔が、困惑に歪む。
「林野君…?」
「……俺は、お前みたいに、人の心を読むことなんて出来ない。だから、…お前が今、何に悩んでいるのか分からない」
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