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そう。自分には、特殊能力なんてない。
人の心を正確に読み取ることが出来るとか、何もしなくても意思疎通が図れるとか。
だからこそーー言葉に頼るしかないのだ。
「…黙ってちゃ、何も分かんねえだろ。言えよ、悩んでるなら」
「……!」
逢坂が、一瞬驚いたような表情をする。
が、すぐに元の悲しいような、切ないような表情に戻って。
「……そんなの、君には関係ない」
「っ確かに、関係ないかもしれないけど……お前がそうやって傷ついた顔してるのを見ると…調子が狂うんだよ」
「……っ」
逢坂が、戸惑うような表情を浮かべる。
この立場が、いつもなら逆なのに。
そんなことを思いつつ、心に浮かんだ言葉を、躊躇いがちに口にする。
「いつも、俺はお前に頼りっぱなしだから、……だから、俺じゃ頼りないかもしれないけど、たまには…頼ってほしい」
言ってて、何だか小っ恥ずかしくなる。
頼ってほしい、なんて台詞、誰かに伝える日が来るとは思わなかった。
「……ふ」
逢坂が、小さく笑う。
「…やっぱり、君はとても心が綺麗だね。羨ましい反面、少し…妬ましくなるくらいに」
逢坂の手が、後頭部に回されて。
そのままぎゅっと抱き寄せられ、ふわりと甘い柔軟剤の香りが鼻につく。
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