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「……っ…」
逢坂は小さく息を吐いて、眉を顰める。
「…ごめん、本当は俺が、君を守らなきゃいけないのに。逆に君に慰められるなんて、……頼りないにも程があるよね」
「……お前のこと、頼りないなんて思ったことねえよ」
逢坂が小さく呟いた言葉に対して、首を横に振る。
「俺は、いつも守ってくれるお前の背中しか見てなかったから。だから、こうして弱い部分を晒してくれるのは、……少し嬉しい」
すらすらと淀みなく言葉が出てくることに、自分でも少し驚きながらも、背中に回された逢坂の手を、そっと解く。
そうして少し身体を離せば、その綺麗な灰色の瞳と、視線がぶつかる。
「……俺はお前みたいに力を持ってないから、出来ることは少ないけど。でもきっと、話を聞いて、励ますことくらいは出来るから。だから、辛いことがあるなら一人で抱え込まないで、たまには…頼ってほしい」
「……っん、…うん…」
気のせいか、逢坂の瞳は少しだけ潤んでいるように見えた。
「……ありがとう」
逢坂の右手が、頰に触れる。
その状態のまま、じいっと見つめられれば、動けなくなる。
ーーこうやって、触れられるだけで……胸がふわふわして、落ち着かなくなるのは。
後にも先にも、きっと逢坂だけ。
何となく、そんな気がする。
逢坂が、ゆっくりと顔を近づけてくる。
不思議と、嫌な気持ちはしない。
むしろ、近づいてくるたび、胸がとくとくと高鳴ってゆく。
鼻と鼻が触れ合うくらいまで距離が縮まった時、逢坂が小さく、聞き取れないような声で何かを呟く。
聞き返そうとしてーーそれより早く、吸い寄せられるように、互いの唇が重なる。
初めての、同性とのキスは。
ーー甘い、ケーキの味がした。
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