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◇◇
「…いい、今すぐにこの山を下りて、お祖母様の家に向かいなさい」
母様が切羽詰まったような声で、言う。
「おばあさまの…?」
「そうよ。何度か行ったことがあるから、道は分かるでしょう。…さ、行って」
母様が、背中を押す。
「かあさまと、とうさまは…?」
「……っ」
母様の顔が、一瞬強張る。
が、母様はすぐに元の表情に戻って、急くように俺の背中を戸までぐいぐいと押した。
「……母様と父様は、後から行くわ。だから、一人で先に行っていて」
「…わかった、まってるね!」
そう元気に言えば、母様の手が、背中から離れる。
「……さよなら、鈴」
振り向きざまに見た母さまの顔はーー何だかとても、切なく見えた。
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