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◇◇
時刻は午後11時。
携帯を枕元に置き、電気を消して布団に入る。
目を瞑って、しばらくそのままごろごろしながら、ふと頭浮かんだ、さっきの女性のことを考える。
本当に、綺麗な人だった。
どこかでモデルをやっていて、それで生計を立てていると言われても、全く疑問を抱かないくらいの、美人。
ーー結局、何者だったのだろう。
“彼”に近付くな、とか、あの方のほうがうんたらかんたらとか言ってたけれど。
そもそも、“彼”とは誰なのだろう。
わざわざ俺に忠告をしにきたということは、きっと俺の親しい人の筈。
それに、“彼”と言ったのだから…きっと男だ。
そうなると、……逢坂?
いや、高坂の可能性もあるか。
「ーーん」
ブブブ、と携帯が音を立てる。
メールだ。こんな時間に、誰だろう。
そっと携帯をアンロックして、メールのアイコンをタップし、新着メールを開く。
そこに並んでいたのは、たった三文字。
『ごめん』
混乱しながらも、急いで送信元を確認してみてーーどくん、と胸が跳ねた。
ーー逢坂だ。
そう認識した瞬間、頰が火照っていくのが分かった。
折角、思い出さないようにしてたのに。
逢坂の名前を見るだけで、聞くだけで、嫌でも思い出してしまう。
頰を滑る手。
そこから伝わってくる微かな温もり。
高鳴っていく鼓動、熱を帯びた逢坂の瞳。
そして……柔らかな唇の感触。
全てが、ついさっき起こったことのように、脳裏から離れない。
ーーどうして、あの時逢坂は、…俺にキスしたのだろう。
それを、どうして自分は拒まなかったのだろう…。
「……っ」
ーー考えたくない。
もしかしたら、心の奥底では、気付いているのかもしれないけれど。
でも、認めたくなかった。
認めてしまえば、……自分が、酷く汚くて醜い存在であるように思えたから。
逢坂への尊敬とか、感謝とか、そういう綺麗な気持ちが全て、……穢れていくように思えたから。
携帯の電源を落として、枕元に置き、布団を深く被り直す。
半ば無理矢理目を閉じれば、疲れていたのか、すぐに意識が闇に吸い込まれていくのを感じた。
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