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◇◇
「…おはよう、林野君」
今日も逢坂は、何もなかったかのように挨拶をしてくる。
こっちはこんなにも翻弄されて、悩まされているというのに。
逢坂は、気にも留めていないということか。
「……おはよう」
取り敢えず自分も、気にしていないふりをして、いつも通り挨拶を返す。
キスなんて、欧米では挨拶がわりのスキンシップなのだ。
きっと、気にしすぎる方が、おかしい。
無理矢理そう思い込み、気まずさを払拭するべく、軽く頭を振る。
「…あれ、君……」
そうして席に着いたところで、ふと、逢坂の手がこちらに伸ばされる。
「…君、ひどい隈が出来てるよ。大丈夫?寝不足なんじゃ……」
触れられる直前、脳裏に、あの日の出来事が鮮明に蘇る。
『……ありがとう』
優しく笑んだ、逢坂の顔。
触れられた部分から伝わってくる、仄かな温もり。
重なった唇の感触…。
「……っ!」
ーーやっぱり、無理。
只のスキンシップと思い込むなんて、出来ない。
気が付けば、その手を払っていた。
逢坂が、驚いたように少しの間固まる。
「…あ、ごめ……。痛かった、よな…?」
「……」
逢坂は無言のまま、くっと眉を顰め、目を細める。
ーーどうしよう。
逢坂は、心配してくれたのに。
怒らせてしまった、だろうか…。
「あの、逢坂…」
「……ごめん」
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