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逢坂が放った一言を、すぐに呑み込むことは出来なかった。
数秒の後、やっとの思いでどういうことだよと聞き返せば、逢坂は俺から目を逸らし、その視線を下へと落とす。
「…そのままの意味だよ。…あの時は、少し…おかしくなってたんだと思う。もう二度と、あんなことしないって、そう誓うから。だから、…あのことは、忘れてほしい」
「……っそんな、」
忘れるなんて、ーーそう言おうとして、はと押し黙る。
逢坂の言う通り、いっそ、忘れてしまえば楽になるのかもしれない。
熱が織り込まれた瞳に見つめられて、高鳴った心臓のことも。
触れられた頰から伝わってきた、仄かな温もりも。
甘ったるい、ケーキの味がしたキスも。
罪悪感さえ覚えるような、汚くて、穢れた気持ちも。
ーー全て、忘れて。
“利用価値”以上を、求めなければ。
「……分かった」
ーー全て忘れて、戻るんだ。
元の、互いの利益の為に守り守られる関係に。
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