アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
89
-
◇◇
「ふあ……」
もう何度目か分からない、溜息が漏れる。
ーー何だか最近、眠くて眠くて仕方がない。
終始頭がぼーっとして、何も手につかない。
「……ん、」
ふと、襲ってきた尿意に、身体をぶるりと震わせる。
教室の中の時計に目を走らせれば、次の授業が始まるまではあと七分。
トイレに行って戻ってきても、十分間に合う時間だ。
俺はトイレに向かう為、椅子を引いて立ち上がる。
その途端、くらりと眩暈がして、目の前が霞んで。
ぐらりと身体が傾き、しまったと思った時には…もう遅い。
目を瞑って、次にやってくるであろう衝撃に備える。
ーーが、自分の身体が地に落ちる前に……ふわりと、後ろから抱きとめられて。
「……大丈夫?」
耳を擽る、聞き慣れた声。
強烈な既視感を覚えながらも、抱き締められたまま、後ろを振り向く。
「……逢坂…」
…やっぱり、逢坂だ。
「…っごめん、…ありがとう」
直接逢坂の目を見ることなく、なるべく合わせないようにしながら、体を離す。
そして、逢坂に背中を向けようとして……それを拒むように、ぐ、と右腕を掴まれた。
「…林野君」
「っな、……なに」
逢坂が、顔を近づけてくる。
見たくないのに、そこに視線が縫い止められてしまったように、目を逸らすことが出来ない。
「……やっぱり、顔色悪い。…それに、ここのところずっとぼーっとしてるし、目もとろんとしてる」
「……そ、それはただ、…寝不足な、だけで」
「……本当に?」
逢坂にじ、っと見つめられて、何も言えなくなる。
「……何か、隠してるでしょう。俺に」
「……ッ」
俺が黙っていれば、…逢坂の手が、頰に触れた。
まるで陶磁器に触れるかの如く、丁寧で優しい触り方をされて、どきんと胸が高鳴る。
「っか、関係ないだろ、お前には…」
ーー忘れたいのに。
「…関係なくないよ、…君にもしものことがあったらって、…心配なんだ。隠さないで、教えてよ。俺は君を守りたい、…守らなきゃいけないんだ。だから」
ーー忘れられなく、させる。
「……っ触るな…‼︎」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
85 / 128