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◇◇
「……はあ」
教室に戻り、席に着いたところで、深い溜息が漏れた。
まだ三時間目が終わったばかりだというのに、気が重い。
理由は二つ。彼のことと、…吉田さんのことだ。
『……付き合ってよ、私と。…その条件を呑んでくれるなら、誰にも言わないであげる』
ただでさえ、女子は苦手だというのに。
付き合うことになれば、嫌でも側にいる時間が増えることになる。
けれど、彼に迷惑はかけられない。
我慢しないと。
なんて考えていた時ーーふと、背後から強い霊力を感じて、振り向いた。
そこにいたのは……林野君。
「…逢坂」
一目見てーー憑かれていると分かった。
彼は焦点の定まらない目でこちらを見ると、唇の端を吊り上げて、にいっと笑った。
「……逢坂、…俺、えへへ、…」
しかも、ころころ表情が入れ替わるのを見ると、どうやら複数の霊に憑かれているようだ。
とにかく、このままじゃまずい。
複数に憑かれていると、その分生気を吸い取られるスピードも早くなる。
彼の生気を全て吸い取られる前に、何とかしないと。
「おい、皆席に着けー。授業始めるぞー」
が、最悪なことに、ここで本鈴が鳴り、先生が教室に入ってきてしまった。
どうしよう。一時間待てば、昼休みが来る。
それまで……もつだろうか。
いや、きっともたない。
「はい、静かにー。で、欠席は……」
「…先生」
意を決して、席を立ち、手を挙げて先生を呼ぶ。
クラス中の視線が、こちらに集まる。
「ん?なんだ、逢坂」
「はい、あの……林野君が体調が悪そうなので、保健室まで付き添ってもいいですか?」
咄嗟に、その場凌ぎの嘘をつく。
何とか、誤魔化せるといいのだけれど。
「…分かった。行ってこい」
「…ありがとうございます。…行こう、林野君。歩ける?」
良かった、何とか信じてくれたみたいだ。
生気のない目でこちらを見る林野君を、半分支えるようにして、急いで教室を出る。
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