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どこか、人気のないところに行こう。
そう思い、頭を巡らせて……一番最初に思い付いたのは、屋上。
あそこならスペースも十分あるし、誰もいないはずだ。
「…行くよ、林野く……ん?」
彼の肩を抱いたままそう言ったところで、……ぴたりと、彼が足を止める。
どうしたのかと顔を覗き込んだ瞬間ーー彼の唇が、歪んだ。
「……ッは、…‼︎」
一瞬、呼吸が出来なくなるほどの強い衝撃が、腹に走る。
ーー殴られた。
そう理解したのは、一度宙に浮いた身体が、地面に叩きつけられてからだった。
痛みに顔を歪め、げほげほと咳き込む俺を見つめながら、彼はケタケタと壊れた人形のように笑って、距離を詰めてくる。
「…ネエ、…ワタシのカオ、…ミテエ…」
「っ……」
駄目だ、このままじゃやられる。
殴られた腹を抑え、何とか立ち上がり、階段の方へと走り出す。
後ろをちらりと見れば、彼が不気味に笑いながら、追いかけてくるのが見える。
本当は、穏やかにいこうと思ったのだけれど……仕方ない。このまま、屋上まで連れて行くしかない。
「アハッ、……アハハハハハ」
狂ったような笑い声が後ろから聞こえてくるのを確認しつつ、急いで階段を駆け上がる。
殴られた腹がずきずきと痛んだけれど、そんなの御構い無しに、ひたすら走る。
そうして、やっと屋上のドアが見えた時には、息は切れ、足は疲れ果てていた。
運動習慣のない自分を恨みつつ、ドアノブを捻り、ほぼ体当たりするような形で、屋上の床に転がり込む。
「…はぁ、…っは、…」
身体が熱くて、喉が痛い。
が、息を整える暇もなく、彼の姿が、視界に入ってくる。
「…ネエ、…ドウシテ、ニゲルノオ…?」
「…っ……!」
早く、祓わないと。
首元にかけた鈴を取り出そうとして、それより早く、彼の足が手首を蹴り払う。
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