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「…っ林野君…!」
そいつの姿が消えた後、急いで落ちた鈴を拾い、彼の側へと駆け寄る。
は、はと浅く息を吐く彼を抱き抱えれば、視界の隅にちらりと鮮やかな赤が写る。
それが何であるのかを確認するより早く、気付けばその赤に唇を寄せていた。
「……っ、は…」
そっと舌を這わせてから、軽く歯を立てて、じゅっと肌ごと吸う。
刺激に、彼はきゅっと眉を寄せて、小さく身動いだ。
「……ん、っ……」
あいつは彼と何度も体を重ねたと言っていたから、きっと首筋だけじゃないはず。
彼のワイシャツのボタンを外し、はらりと白い肌を露わにする。
ーー思った通り、身体のあちこちに散った、赤い印。
込み上げてくる吐き気を抑えながら、一つ一つ、吸い出してゆく。
「…っん、……ぁ、…あ……」
ぴくぴくと身体を揺らして、くねらせて、唇から吐息と共に艶声を漏らす彼は、…素直に、色っぽくて綺麗だと思った。
情事の時には、もっと乱れた姿を見せるのだろうか……なんて、危険な好奇心が覗くほど。
「……おう、さか……?」
白い腹と、対照的な赤を吸い出そうとした時ーーふと、その瞳が薄く開かれる。
彼は状況が呑み込めていないようで、目を何度かぱちぱちとさせ……それから、ぶわっと顔を赤く染めた。
「っな、…なに、して……‼︎」
「あ、っちょっと、暴れないで…!」
身体を捩り、手足をじたばたさせて、彼は必死に腕の中から逃れようと藻がき始める。
が、相当弱っているようで、手首を掴んで押し倒し、上に跨るような体勢をとれば、いとも簡単にその動きを封じ込めることが出来た。
それでもなお、抵抗しようとする彼の腹に、無理矢理歯を立てて吸い付けば、彼は力なく首を左右に振って、きゅっと耐えるように眉を寄せた。
「…ごめんね、少しだけ耐えて。…これをしないと、君はもっと弱ってしまうから」
「あ、っぁ、……ん……っ」
彼は、熱に浮かされたような瞳で空を見つめながら、唇が肌に触れる度、甘い声をあげた。
その淫らで可愛らしい姿に、何度も理性を溶かされそうになったけれど、その都度心の奥底に渦巻く薄汚い感情が、それを止める。
ーー認めたくない、信じたくない。
あいつが俺のふりをして、彼の身体を開き、その淫らな声も姿も、独占したという事実を。
これは、…俗に言う、“嫉妬”というものなのだろうか。
もしそうだとしたら、自分は彼を……少なくとも、利用価値以上の存在として見ていることになる。
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