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◇◇
「…ん、ご馳走様でした」
余りにも美味しくて、夢中で食べていると、気付いたらもう全てなくなっていた。
重たいお腹をさすりながら、使った食器類をキッチンに運ぼうとすれば、君は休んでてと止められてしまう。
「…でも、ご飯も作ってもらったし。片付けくらいは」
「いいの、君は今休まなきゃ駄目。すぐ終わるから、ここで待ってて」
「……ごめん、ありがとう」
いいよ、と逢坂は笑って、てきぱきと片付けを始める。
食器類を全てキッチンの方へ運び、洗剤をつけて綺麗に洗い、白い布巾でテーブルの上を拭いて。
感謝しつつ、その手際の良さに感心していると、どうやら片付けが終わったらしく、エプロンを外した逢坂が、こちらに歩いてくる。
「…あの、ありがとう」
「どういたしまして。…料理、…美味しかった?」
「うん、すごく」
「そっか、喜んで貰えて良かった。…じゃあ俺、シャワー浴びてこようかな。少しの間、待っててもらってもいい?」
返事を躊躇ったのは、逢坂がシャワーを浴びている間は、一人っきりになってしまうから。
でもまあ、一人になるといっても、せいぜい十五分くらいだろう。そんな短時間に襲われることなんて、きっとないはず。
「……怖い?」
「えっ……」
「…手、震えてるから」
慌てて手を隠そうとするも、それより早く、逢坂に手を掴まれてしまう。
逢坂はふっと笑うと、頭にぽんと手を置いて、目を合わせてくる。
「…大丈夫だよ、すぐ戻ってくる」
「……うん」
「…あ、でも一応、お守りとしてこれ渡しておくね」
逢坂はそう言うと、首にかけていたネックレスを外し、手に握らせてくれる。
「…いいの?」
逢坂はこくりと頷いて、微笑みながら、頭を優しく撫でてくれた。
「……行ってくるね」
くるりと向けられた背中を見つめながら、軽く手を振る。
ほんの少し離れるだけだというのに、…やっぱり、寂しい。
そんな気持ちを代弁するかのように、手を振るのに合わせて、鈴がちりちりと音を立てた。
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