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今日も、終わりか。
溜息をついて、身体をベッドに預ける。
暗闇の中、何度か瞬きをして窓の外へ目を向ける。
黒い絨毯に、白く輝く埃のように小さな星々が、懸命に瞬いている。
思わず、深い溜息が零れ落ちた。
毎日、すごい速さで時が流れていく。
一分、一時間、一日、一週間。
俺だけを置き去りにして、時は無情にも流れていく。
周りの人が流されていくのを、俺はただ見つめていることしか出来ない。
動きたくても、動けない。
まるで魔法でもかけられたみたいに、一歩を踏み出すことが出来ない。
それほどまでに“逢坂鈴”という存在は、自分の中で多くを占めていたのだろう。
距離を置こうと言われた時、一度は怖気づいてしまった。彼の為に命を懸けることなど、自分には出来ないと。
しかし現に自分は彼を失い、死にかけている。
つまり彼は自分の躊躇いさえも超えてしまうほど、自分にとって大切で、唯一無二の存在だったのだ。
もしもあの時、自分が告白していたら…。
「っやめやめ」
このまま起きていたら思考がどんどん闇に落ちていってしまう気がして、強引に目を閉じる。
過去は過去だ。今更振り返ったところで、何かが変わるわけではない。
無駄に頭を使うより、何も考えずに寝てしまう方がずっといい。
先程までずっと寝ていたというのに、睡魔はすぐにやってきた。身体の力を抜いて、引き摺り込まれるままに意識を預ける。
ーーふ、と風が頬を撫でた。
衣服の擦れるような音が、僅かに鼓膜を震わせる。
「…だ、れ…?」
これは、夢か、現か。
うとうととしながらどちらか測りかねていれば、ふわりと身体が持ち上がる感覚がした。
すぐ側で、誰かの吐息が聞こえる。
「誰…?」
目を開けてみるけれど、暗闇の中では何も見えない。
耳元で、誰かがふっと笑う音がした。
「…もう、分かってるんじゃない?」
「……おう、さか…?」
答えを聞かなくても、何となく確信があった。
何度も夢に見て、恋い焦がれていた人。
会いたくて、会いたくて、仕方がなかった人。
「…迎えに、来てくれたんだ…」
涙が、頬を伝った。
抑え込んでいた想いが、堰を切って溢れ出す。
「俺、ずっと、…ずっと、待ってたよ。死んだなんて、嘘だって。きっとどこかで、生きているんだって…」
彼の胸に、頬を寄せる。
くらくらするような甘い匂いの中で、そっと目を閉じて、彼を感じる。
触れた場所から伝わる、温もり。
包まれるような、安心感。
全て、あの時のままの彼だった。
「っ、会いたかったぁ…」
逢坂の首に手を回して、抱き寄せる。
吐息が首にかかって、くすぐったかったのだろうか、彼が小さく笑う。
「…ねえ、今度はもう、離さないで…」
その腕の中で揺籠のように揺られながら、彼に身を委ねる。
彼から小刻みに伝わる振動が、心地よく眠気を誘う。
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