アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
16 アイス
-
「あー、悔しい。」
測定が終わり、着替えも手早く済ませ、帰る用意をする。やはり脱ぐ時にはひやひやしたが、来栖と柳の2人でほとんど話しているので、これならこれからも大丈夫そうだ。
声をかけると着替える手が止まってしまうので2人が話しかけなかっただけなのだが、有馬にとっては好都合だった。
「次は長距離とか走るみたいっすね〜、そん時頑張ったらどうですか?」
柳に励まされ勢いづく来栖だったが、有馬の得意競技であるということを知らない。
そのまままた1限が過ぎ、放課後になる。来栖に「一緒に帰ろう」と誘われ立ち上がる有馬だが、柳が僕の名前を呼んで何か言いたそうにしている。
来栖も気づいたようで「早く言え。」と急かす。
「えっと、朝の登校中にアイス屋見つけたんだけど、女子ばっかでなんかはいれねーし、一緒に行かにゃい?」
どこか緊張した面持ちなのに、ふざけて猫の真似をしながらニャンニャンと鳴く柳。栖はため息をついて「行きたくない」と言った。
「れんれんは?」
甘いものが好きな僕としては行きたい気持ちが強くあるけど、来栖が行きたくないと言っているのに自分が行っていいのだろうか。散々悩んでいると、来栖の方から行ってきたらいいと後押しをもらった。
それなら、と頷くと柳は目を輝かせて僕に抱きついた。ぎゅーっと顔に胸を押し付けられて苦しかったけど、嫌じゃない。
「じゃあ、またな。」
電車通学の柳に手を引かれ、来栖とは途中の道で別れる。長く急な坂を登り、息を切らしながら来たのは行列が出来たアイス屋だ。こんな場所は初めて来たし、ここにこんな店があるのも知らなかった。
「めっちゃ並んでるべ。一時間くらい待つかなぁ。」
暖かくなってきたとはいえ、まだアイスの時期じゃないだろうに。完全に予想外だった行列に、アイスへの期待が高まる。店から出て満足そうに帰っていく客を見ると尚更楽しみだった。
喋りながら時間を潰し、ついにアイスが色とりどりに入ったショーケースが見えて、二人でどれにしようかと相談し始める。アイス屋自体が初めてで、見たことのないアイスの色に、好奇心が湧いた。
目の前にいた客はいなくなり、二人の番となる。有馬は犬型のアイスを注文し、柳はワッフルと桜色のアイスが組み合わさった春限定メニューを頼んでいた。
席につくと、なるほど、女子がいっぱいというか女子しかいない。男性客は自分たち2人だけだ。
「れんれん、なんで犬を作るアイス、緑と赤で注文したの。」
桜型のカップに入ったワッフルをつつきながら、柳は面白そうに見ている。犬をかたどったアイスは赤が大部分で、緑が犬型の淵に沿って作られていた。黒い斑点も少しあって、とても犬とは思えない色だった。
「スイカ味らしいんだけど、食べたことないし、なんか色が面白かったから。」
口に含んでは目をぎゅっと瞑り、冷たさに頭を叩くけど、嬉しそうに食べる有馬は、初めて子供がアイスを食べたような行動をしていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 65