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34 靴箱の中身
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「あ、いや、それは、そのたまたま持ってきてた、やつで。」
予想外の展開にアタフタと慌てる。そんな僕に言葉を返すことなく無言で靴箱にちかづいた。
「ま、待って!」
そう叫んで靴箱を閉めたけれど、低い声で「どいて。」と言われ、思わずすごむ。
「来栖。」
柳がそう呼ぶと、来栖に手首を引かれ靴箱から離される。ついに柳の手は有馬の靴箱に伸び、扉を開けた。
「信じらんねぇ」
隣で有馬に立っていた来栖がそう言って、手首を掴む手の力を強めた。
靴箱の中には大量の画鋲が入っていて、靴箱を開ける際に掴む扉にはカッターの刃が貼ってある。上靴にも大量に入っていて、中からら針が何本か突き出ている。裏から刺したのだろう。
画鋲を落としても、落としていなくてもバレるのは時間の問題だったかもしれない。スリッパを借りなければ学校で過ごせない程の量。でも、スリッパを借りてくるとなればなぜということになるだろうし。
そして有馬はもう一つ気づいた。
「来栖、ちょっと離して」
握られていた手を振りほどいて、柳の元に駆け寄る。柳の手からは血が出ていて、カッターで切れたのだと分かった。少しずつ水滴が垂れて、床に赤い斑点がいくつもできる。僕のせいだ。
「手怪我してる。早く手当しないと。」
そう言って保健室に連れていこうと引っ張ったけど、全く動いてくれない。名前を呼び、「保健室に行こう。」と言うのに全く返事を返してくれないし、血は床に広がるばかりだ。
「いつから。」
やっと返事を返してくれたと思ったら、いつからこれがあったのかと聞かれる。いつだと言われても、そんなの覚えていない。結構最初から入っていたから一ヶ月前くらいだろうか。いや、今はそんなことどうでもいいのに。
「答えろ、いつだ。」
来栖もそう言うから、しぶしぶ一ヶ月前ぐらいだと言うと2人は驚いたように目を見開き、悔しそうに唇を噛んでいた。
「何でこんなんなってるのに俺らに言わないの。」
柳は怒ったように有馬に詰め寄り、来栖もそれを止めない。大きな声と、近づいてくるホームルームの時間に人が集まってくる。3人の周りには大きな円ができていた。
「だって言ったら気にするでしょ。」
そう言うと柳に思いっきり頬を叩かれた。大きな音が響いて、周りからは息を呑む音が聞こえる。母親に叩かれた時よりは痛くなかったから、手加減してくれていると分かるのに、何かが酷く痛い。
柳は凄く怒っていた。僕が何を言っても答えないくらいには。睨まれ、怖くて体が動かない。なんで。叩かれてもいつも平気だったのに。
少し泣きそうになっていると、ギャラリーをかき分けて誰かが介入してくる。驚く暇もなく、その人物は有馬に駆け寄り、腕を取った。
「あ、蒼せんぱ・・・」
有馬のその声をかき消すように周りからは歓声に似た悲鳴があがる。「おいで」と言われて引かれる腕に、罪悪感と少しの高揚感が混ざりあって複雑な気持ちだった
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