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37 契約
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学校が終わり、下校時間になる。一人で階段を降り下駄箱を開けると、そこには画鋲やカッターの刄など危ないもの何もなく、代わりに1通だけ手紙が入っていた。
『中庭に来なさい。』
前にも見たことがある字に竜胆さんか、と手紙をカバンに入れる。早速中庭に向かい、相変わらずゲームに夢中になっている彼の前に立つ。
「遅いわよ。何分待ったと思ってるの。」
そう言って怒るけど、目をこちらに向けることなくゲーム機に釘付けだ。高速で両手を動かしながら、口だけ有馬に向かう。
「ねぇ、契約しない?」
「契約?」
「そうよ、あなたの面倒事一切合切私が解決してあげる。」
そう言うとやっとゲーム機から目を離しこちらを見た。なんだか楽しそうな目に少し不安を覚える。
「あなた今すごい噂されてるわよ。たしか、声が出せないヒロインぶったストーカーだったかしら?」
ひどい言われようだなと苦笑いしながら、「一切合切って?」と聞いた。
「柳と来栖のこと。女子のこと、イジメのこと。」
契約ってことは僕も何か返さなくちゃいけない。
「竜胆さんが僕に提示する条件は?」
「それは解決してから言うわ。失敗したら私からあなたに要求することはないし、どうかしら?」
美味しい話には裏がある。自分に提示される条件というのが得体の知れない。
「遠慮します。」
第一、来栖と竜胆さんの関係が微妙だ。柳もそれを知っているだろうから上手くいくとは思えない。ここで竜胆さんが介入して余計にややこしいことになることだってあるに違いないだろうから。
中学の頃の教師が行った。助けてやると。そんな言葉に期待して学校で待ち受けていたのは地獄だけだ。
「遠慮なんてしなくていいわよ。私のためでもあるんだから。」
断ったつもりなのに全然伝わっておらず、肩を落とす。ちゃんと断ろうと口を開いたが、話が終わったとおもった竜胆さんが自分の言葉を聞かずその場を去ってしまった。行動が早すぎる。
「ああ、もう。」
その場に座り込むと、萎れている小さな花が見える。青い花は少し茶色くなっていて、花びらを触ると取れて手に落ちてしまった。また期待してしまう。その分だけ叶わなかった時は辛いのに。
「来栖が怒って・・・、柳にまた叩かれたりして・・・。」
できる限りの最悪な事態を考えながら、これ以上ひどくなりませんようにと、風に花びらを流しながら祈った。
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