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40 紙の差出人
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「そこはありがとうとか、ごめんとかいう場面すよね!?」
そう言ってジタバタする柳にやっとごめんと言い、髪の毛に関しては嫌だと首を振る。
「じゃあ、俺が切ってやるよ。」
来栖からの提案に、そっちの方がいいと頷く。器用だし、今してる髪型も綺麗だから信用できる。
「あ、ごめん、れんれん。ちょっと切りすぎちゃった。もうちょっと切るね。」
柳の声真似をする来栖に有馬も再度頷く。想像出来すぎて怖い。
反撃が来るのかなって待ってたけど、そんな気力もないのか、むくれただけで終わった。
髪はその場で柳に切ってもらい、有馬の要望で後ろ髪だけ整えてもらった。
「前髪はいいのか?」
「うん、いい。」
「れんれん、なんかあったんすか。怪我とか、火傷とか。」
「バカ、柳」
バシッと頭を叩かれて、来栖を見るがすぐに俯いてまた謝る。
「れんれんにはちゃんとこっちから聞かないとやっぱり答えてくれない気がするっすから。」
信用ないなぁと苦笑するけど、実際そうだから仕方がない。
「僕が自分の顔みたくないだけ。」
そう言うと、今度は何も聞かずに「そっか。」とだけ言ってその会話は終わった。
「あー、疲れた、帰るべ。」
散髪した髪を掃除し、階段を降りる。憑き物が取れたのか、肩の荷が随分軽い。
「入学したばっかたっつーのに、ドタバタと忙しかったわ。」
前髪をかきあげながら、来栖はこちらを見る。
「れんれんのせいだかんね。」
部活に入らないことに決めたということも言われ、それも僕のせいらしい。そんな会話をしながら、かなりいびられ、柳と別れ、来栖とも別れた。
その中で初めて知る。物理の時間に投げられた紙は誰かの悪意で投げられたものではなく、柳が仲直りしたいといった内容が書かれていたということ。
それを有馬は読まずに捨て、お守りを渡そうとした時に無視されたという訳だ。それは自分が悪いと反省しながら、そう言えばお守りを返していないことに気づく。まだ家だ。
最後は半分流し聞きながしていたけどすごく感謝していた。
ー俺達、友達じゃん?
そう言って、仲直りしようと言われた中学時代。
その言葉を本気で信じて、ゲームを買ったり、お金をあげたり、雑用をしたり。
そこまでされてもなお気づかず、本気で仲直りできると思っていた自分が、今すごく惨めだった。
自分はあの頃、一言二言で仲直りを出来る友達を作っていなかったんだろう。適当に愛想笑いして、適当に返事を返して浅く付き合って。
それで楽しいと思っていた。
それが正しいと思っていた。
本当の楽しさを知った僕はもう間違えたくない。
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