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55 熱い
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「ストーカーくん。」
そう声をかけて廊下の窓にもたれ掛かっているのは相良。いつも一緒の柚子森はいなくて少しだけ安心した。
相良に声をかけられる時、大体第一声目が「ストーカーくん。」だ。
「昨日、王子様と夜中学校来てただろ。」
「え?」
「2年の神奈崎だっつーの。可愛くなったと思ったら色けづいちゃって、もしかしてできてんの?うわ、キモ。」
見間違いじゃないだろうか。昨日もいつも通り早く寝て7時ぐらいに起きたし、できてるって何の話だろ。
「昨日は普通に家にいたよ。」
「嘘は良くないよー。だってさ、俺見たもん。このホクロ。」
左目の下の頬を強く押され、目をぎゅっと瞑る。
「ここにホクロあるの知ってた?」
知ってるけど、それがなに。
「印象的だったから覚えてたんだよなー。昨日のストーカー君もばっちりホクロくんだったし。」
「ふは。ホクロくんだって。ピッタリじゃん。」と1人で笑っている。
「夜の学校で何してたんだよ。いやらしいことでもしたの?」
違うと首を降るけど全然信じてくれなかった。 埒があかなかったから「ほんとに知らないよ。次授業だし、早く教室行きたいからもういい?」と無理やり話を切り上げる。
言うだけ言って教室に向かおうとしたら、後ろから手が伸びてきて、首を撫でられる。
「ほっそいな、締めたら折れんのかな。」
いつの間にか両手が首に添えられていて、力を込められていないのに、目に見えない力に押されて圧迫感が迫ってきた。母親にされたことを思い出しながら。
「や、やめ・・・」
「そんなさぁ、マジになんないでよ。」
あっさり手を離し、相良は後ろを振り向いた。
「わぁ、そんな怒った顔すんなよ。王子様が怖い顔してちゃあなぁ?」
「君さ、そんなことして何がしたいの。」
いつの間にか後ろに神奈崎がいて、近くには峰守もいる。
「あははっ、王子様の登場だ。じゃあね、ストーカーくん。」
ひらひらと手を振って窓から飛び降りた。ここ二階なんだけど。慌てて窓から覗き見ると綺麗に着地した相良が普通に歩いていた。はぁ、心臓に悪い。
「蓮、大丈夫?」
そう言って抱きしめてくれる神奈崎の胸に顔を沈めた。この匂い、コーヒーの香り。あのカフェを思い出して落ち着く。
「なにもされてない?ごめんね、俺のせいだね。」
あったかい。気持ちいい。このままずっとこの人に抱きしめられていたい。
「その顔、やっぱり有馬なんだ。」
声がして顔を上げると、峰守先輩が僕を見ていた。抱きしめられて嬉しがっている自分を見られて恥ずかしくなる。更に力を込めて神奈崎の胸に沈み込むと、神奈崎の込める手の力も強くなる。
「みね、あっちいっててよ。蓮が可愛いから邪魔されたくないんだけど。」
うんざりしたようにため息を着くと、それから峰守も去っていった。廊下のど真ん中にいたから、近くの空いてる教室に入る。今、かわいいって言った?
「蓮、心配だからあんまり一人にならないで。大事って言ったでしょ。」
回される腕は温度を持ったみたいに熱くて、離してほしいと思うのに離して欲しくもないとも思う。ゴチャゴチャな気持ちに戸惑ったけど、頭に置かれた手にそんな考えはすぐ吹っ飛んだ。
やっぱりずっとこのままがいいな。
「小さい子みたい。」
撫で続けてる神奈崎に少しムッとしたけど、少しだけ母親を思い出していたりする。これって子供だからなのかな。
「もうちょっとこのままでいい?」
次の授業は移動教室で、休み時間はあとちょっとしかないし、教室に返って用意もしなくちゃ。
しなくちゃ、いけないのに。
「・・・うん。」
別にいいやと、そんなことがどうでも良くなってそう返事をした。
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