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60 幸せ酔い
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この学校では体育祭で戦うチームを、縦割りにする。クラスは6組まであり、先輩とも繋がりを持とうというわけで一年、二年、三年の合同チームだ。そして、先輩は後輩の面倒を見るために2年生が一年に教えに来る。少し、いやかなり予感はしてたけど、教壇に立つ先輩方4名の中には蒼先輩もいた。クラスの組み合わせも同じだったらしい。裏で陰謀が働いていないのか考えてしまう。
今は放課後で、体育祭に必要なものをクラス総出で作ることになっている。
「俺は横断幕やります。助手くんの有馬蓮くんも強制参加です。あとは自由に決めてください。」
爽やかさの裏の強引さに何人の人が気づいているだろうか。蒼先輩以外の先輩は、頼りになるような目で見ているし、僕以外のクラスメイトは、ハキハキとする憧れの存在に目を輝かせているし。
「俺っちも横断幕をやりまーす。」
蒼先輩に対抗心でもあるのか、鋭い眼光で睨みつけては、蒼先輩の含み笑いに苛立っている。
来栖はやっぱりトイレに行っていたようで、柳と話し終えてから数分後に教室に入ってきた。おはようって言ったけど聞こえなかったのか、そのまま何を言うことなく自席に座っていた。
「君は旗の方に行ってほしいな。絵が下手な人でもペンキ塗るだけだよ?簡単じゃない?」
「なっ。俺っちが下手だって言いたいんすか!?」
「蓮が言ってたからね。」
そのセリフに柳は、こちらを振り向いたけどグギギと首を横にして視線から逃げた。生徒会の手伝いをしている時に言ったような、言ってないような・・・。蒼先輩の質問攻めが多すぎてあんまり覚えてない。
来栖が絵を書き、他の人が絵を塗ることになる。柳と蒼先輩はずっと口論しているし、来栖はそれを止めずに黙々と絵を描いている。それは一時間や二時間で終わるものではなく、外の景色がオレンジ色になるまで続いた。
横断幕はあと色を塗るだけだ。
「ストーカー君、暇ならこっちも手伝えよ。」
相良が手招きして呼んでいるのは旗の方。二人に構ってられないし、手も空いているから二つ返事で了承した。
「ほら、ストーカーくん。手ぇ出してみ。」
旗の方は元から絵が書いてあるのであとは塗るだけだ。赤ペンキで塗っていると、相良が横に座る。大人しく手を差し出すと、黒ペンキを垂らされた。そのまま筆で手に塗りたくられる。
「ハハハハ、マーキング。」
それだけ行って教室を出ていってしまった。彼は何がしたかったんだろう。いまいち掴めない男だ。
手の平のペンキが乾いていなかったから、洗えばまだ取れるんじゃないかとハケを置いて急いでトイレに向かう。でも、教室と同じ階のトイレは絵の具とかを洗ってる人でいっぱいだったから、少し歩くけど別棟のトイレに向かうことにした。あそこはほとんど人がいないから。
曲がり角に差し掛かった時、壁が死角になっていたし、人がいると思わなかったから向こうから歩いてきた人に気づかなかった。そのままその人とぶつかり、こけてしまう。
「ったた。」
体を起こしあげると、目の前にいたのは僕の手のペンキがべっとり付いた柚子森の姿。何でここにいるんだろう。ペンキが付いた場所を見つめていると、柚子森が僕の視線をおって惨状に気づく。
「は?まじありえないんだけど。」
「ご、ごめんなさい・・・。」
怖い。蛇みたいな獲物を捉える目で、首に巻き付かれているみたいだ。弁償すると言い、再度謝るけど、態度が和らぐことは無かった。
「弁償はいらない。その代わり、手伝ってよ。」
「何を・・・?」
「来栖くんと仲良くなりたいんだよね。手伝ってくれるよね?」
逃げたいためか、別にこれぐらいなら来栖も許してくれるだろうと甘えたからなのか、何を考えることなく頷いた。
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