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62 約束とは脆いもので
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体から毒が抜けなくて暫く動けない。10分ほど経つとやっと起き上がり、シャツを握りしめ、前に交差した。ボタンをとめようとしても震えて一つも止められなかった。
「さ、さむ・・・い」
もう夏なのに、寒気が止まらない。冬みたいな温度が体をおそう。温かいのが欲しい。寒くて凍えそうだ。
はだけた服装のまま立ち上がると、おもむろに空き教室を探した。殆どの教室に鍵がかかってたけど、一つだけ、鍵を閉め忘れたのかいつも空いているのか、一番奥のひっそりした教室だけ空いていた。
教団の方に向かい、机の中を探す。あまり物は置いてなかったけど、目当ての物は見つけた。瞬間、来栖の声かこだます。
ーもう自分を傷付けんな。手首のそれ、絶対するな。
「来栖と約束したけど、1回ぐらいなら・・・いいよね。」
カチカチとカッターの刃を出し、手首に当てた。罪悪感はあったけど止められなかった。
左手を引いた瞬間、右手から大量の赤が落ちる。シャツもズボンも全部染まって赤になる。赤、赤、全部赤。
「・・・あったかい。」
冷たい温度の中から暖かな場所に行くと眠くなる。冬の中のこたつみたいな暖かさを含むこの行為は眠気を装う。そう言えば、今何時だっけ。外は少しばかり暗いし、もしかしたら5時半過ぎてたりして。あれは一度眠ると朝まで起きない。このまま寝たら学校で過ごすことになる。なるのだけど・・・
「眠い・・・」
一度だって抗えたことのない眠りに、その場で崩れ落ち、頭の片隅の方でカッターの落ちた音が響いた。
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