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お兄様
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まさか自分がお城に行ける日が来るだなんて思っても居なかったノア。
この街からも未だに出たことがないノアは、自分の知らない場所に行く事にも胸を踊らされていた。
今日はどんな辛い事だって頑張れる気がして、張り切って部屋を片付ける。
「随分機嫌がいいじゃないか、ノア」
仕事に集中していると突然、低い声がノアの名を呼んだ。
よく聞きなれたその声にノアはビクリと体を震わせ、ゆっくりと顔を上げた。
「お兄様…」
「なんだ、ノア。そんな怯えた顔をするな。」
兄はニヤリと嫌な笑みを浮かべノアを見下ろす。
その笑みはいつも兄がノアをいじめる時のもので、恐ろしさでノアはぎゅっと目を瞑る。
「聞いたぞ、お前城に行くんだってな?」
「は、はい…」
不機嫌そうな声。
そう言えば、兄はノアが街から出ることを嫌っていた事を思い出す。
ノアが未だに街を出たことがないのも、兄が出ることを禁止していたからだ。
「今回は母様も賛成してるみたいだから外出する事は許してやる。だがな、ノア。」
ガンッ
「うっ…ぁ…」
ノアは兄に押し倒され、強く床に頭を打つ。
「調子には乗るなよ。俺達はお前みたいなヤツを家に置いてやってるんだ。外の人間に優しくされたからって、この家から逃げようだなんて考えるんじゃねーぞ。」
兄はそう言うと乱暴にノアから体を引き離して、部屋から出ていった。
部屋に残されたノアは痛みと恐怖に身体を震わせながら暫くその場から動けなかった。
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