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No.1 剣斗と秀也②
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気になる
朝練が終わって教室に向かう途中自販機で飲み物を買う。これは俺の日課。炭酸とかジュースもまあ嫌いじゃないけど買うのはお茶類が多い。
後から同じ部活の佐々木が肩を組んでくる。佐々木は先輩が引退した今、部長として動いていてとても頼りがいのあるやつ。でも、ちょっと性格に難あり。いつも俺に意地悪だから。ホントやだ。
「剣斗ー!お前課題出した?」
「は!?んなのあった!?」
「俺はお前のそういうところが好きだよ」
「ちょ!!佐々木ぃ!!昨日のうちに言えよ!」
「お前言ったってやんねーだろ?」
大丈夫。俺もやってない。という嬉しくもない励ましを受け、悪態をつきながら俺は教室に向かう。どちらかと言うと俺は楽天的な方。悩み事といえば出来の悪い頭と、キツい部活と、彼女がいないこと。あと…あの昨日のピアノの男子生徒が水野秀也だったということ。
彼は潔癖症で有名。声を聞いたことない人だって少なくないだろうし、昼休みだってどこで飯を食べてんだか…。そんな会話すらしたことも無いやつ…でも、ピアノは本当に上手いと思う。俺なんかがそんなこと言って言い訳ないだろうけど、すごくうまい人なんだと思う。繊細で細い指が鍵盤の上を滑ってあのメロディを奏でる。でも…俺はそのメロディが思い出せない。もちろん、曲名も知らないから、調べようがないし…。
眉間にシワがよったのか、考え事をしていたのが顔に出ていたのか知らないが佐々木は顔を覗き込んでくる。
「おや?剣斗なにか悩んでんの?」
「お前にゃ関係ねーよ」
「はあー?」
「…ほんとくだらねえ事だから。」
「んだよ言えって…」
俺はため息をひとつついて、頑固な友人に向き合い、小さな声で呟いた。
「水野と友だちになる方法を考えてた」
その後吹き出した佐々木は俺のげんこつで頭を抱えたまましゃがみ込むことになった。
「いってぇ…」
佐々木が頭を抑えて呻くのを俺は無視して教室への階段を上っていく。
「大丈夫か?」
声をかけるとお前のせいだろ!と背中を思い切り叩かれた。その後は二人で笑いながら階段を登り、それぞれの教室へと向かう。佐々木は4組、俺は2組。今日はサボんなよと心配そうに佐々木が呟く。
いつもふざけていて女子からはデリカシーがないとかさんざん言われてるやつだけど、本当は優しい奴で、いつも人のことを見てる。ま、そうじゃねえとこんな重役務まらねえもんな。
俺は笑って頷く。
教室はいつも通り賑わっていた。女子たちがまだ慣れないメンバー同士で気を使って話している。多分もう少し経てばそんなことも忘れて、バカ笑いしたりするようになる。男子たちはまあ、いつも通りの騒がしさで人見知りという言葉を知らない奴らがいる。
一通り教室を見渡すと、一番後ろの列に前髪の長い男子が本を読んでいるのが目に入る。水野だ。
「よー!剣斗!おはよー!」
「剣斗お前昨日部活サボったんだってー?」
「ちげーよ!具合悪かったのー」
教室に入るとすぐに、俺に気づいたサッカー部や野球部の奴らに囲まれる。それでも俺は勇気がなくて、水野に近づくことも出来なかった。昼も、体育の授業も、掃除の時も俺は水野を探しては声をかけようとして結局無理だった。
でも水野って俺が語彙力がないからうまく言い表せないけど、なんか、人を寄せ付けない雰囲気っての?漂ってる気がするんだよなぁ…。潔癖症なのも、なんでなんだろう。
気になるなぁ…
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