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42話 –真空side–
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兄さんが走って行った方を呆然と見つめたあと自分の髪を思い切りかき混ぜた。
「クソ‼︎」
やり場のない怒りがこみ上げてきて思わず怒鳴る。
もう少しだった。
もう少しで連れ戻せたのに。
でも今こうなっているのは自分のせいだ。
そのことはちゃんとわかってる。
わかっているけど、兄さんに選んでもらえなかったことが悔しい。
《そんなに僕のことが嫌い⁉︎
そんなに僕の幸せが許せない⁉︎》
さっき兄さんが言った言葉が何度も頭の中でリピートされる。
違う、嫌いなんじゃない。
むしろ逆だ。
なのに、昔自分があの人にしてしまったことは真逆の行為。
毎日のように暴言を吐いて傷つけた。
その過去は消えない。
あの時の自分を何度呪ったかわからない。
色んな感情がごちゃ混ぜになる。
また髪をぐしゃっと握りと
「残念だったね。もう少しだったのに。」
という笑いを含んだ声が聞こえてきた。
その声にまたイライラが増す。
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