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仕方なく真島の鼻血を服の袖で抑えてやって、鞄からティッシュを探る。
一体俺は何をやってるんだろう。
襲われそうになったと思ったら、鼻血の介抱とか。
「うー…ご、ごめん」
俺に鼻を押さえつけられてるせいで、真島がモゴモゴとくぐもった声で謝る。
全くコイツアホすぎんだろ。
というかどんだけ興奮してんだよ。
怒ろうとしていた気持ちなんかあっさり失せて、俺はティッシュを探り出すとそれを鼻に押し付けてやった。
「わっ、どうしよう。ごめん。服に血ついちゃって…」
「いいからもう喋んな。横にでもなってろ」
ピシャリとそう言ったら、真島は黙っておずおずと横になった。
その頭の下に鞄を差し入れてやる。
「あ、ありがとう。でも俺…」
「だから喋んなって。目閉じて」
「えっ…えっ!?」
寝ろ、って意味で言ったのにぶわっとまた真島の顔が赤くなる。
なんでまた興奮してんだよ。
呆れたように目を細めたら、真島は慌てて今度こそ押し黙るとぎゅっと目を閉じる。
仕方なく落ち着かせるように、その額にそっと手を置いてやった。
真島は最初こそソワソワしていた様子だったが、そのうち少しは落ち着いたらしい。
二人共会話をやめれば、特別棟のこの一室は随分薄暗く静かだった。
ただ鳴り止まない雨の音だけが、ざーっと窓の外で響いている。
寝たのかは分からないが、俺はとりあえずずっとそのままの姿勢でいてやった。
何やってんだろう、という自分の行動に対する疑問はあったが、なんとなく真島を放っておくことが出来なかった。
「あの…高瀬く…」
「大丈夫かよ?」
「う、うん。もう平気。…その、ごめんなさい」
どうやらちゃんと冷静になったらしい。
予鈴が鳴って身体を起こした真島は、明らかに俺に対して『ヤバイ』という顔をしていた。
赤くなったり青くなったりと忙しい奴だな。
「…あ、あのっ。さっきは――」
「とりあえず頭冷やせ。俺が言っている意味、分かるよな?」
しっかりと真島の目を見る。
俺の口調は、いつになくマジなトーンだったと思う。
真島は息を呑んで押し黙ったが、だがすぐに青い顔のままコクコクと何度も頷いた。
それを見て俺は立ち上がると、この世の終わりみたいな顔している真島の肩をポンと一度叩く。
だがそれ以上は何も言わず、教室へと足を向けた。
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