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飯を食い終わって弁当箱を返したが、今日は眠くならなかった。
俺はさてどうするかなと空を見上げる。
「はい。お茶飲むよね?」
「…あー、ありがとう」
いつも通り食後の紅茶を手渡されて、それを受け取る。
真島は相変わらずちらちらと惚けた顔で俺を見ていて、無言の愛情がひしひしと伝わってくる。
これからこいつに別れ話をしたとして、間違いなく泣かれて前回同様に嫌だ嫌だと駄々こねられるんだろうか。
それをかわして突き放す方法とは一体なんだ。
そもそもコイツは俺が他の子を好きでもいいと言ったくらいだしな。
「…あの、高瀬くん。ごめんなさい」
「…は?」
別に何も言っていないのに突然謝られた。
今度はなんだ。
「その…難しい顔してたから。この間のこと気にしてるのかなって」
「ああ…、別にもうそれはいいよ」
「じゃあ何か嫌なことあった?」
心配そうな顔で覗き込まれる。
これから酷いことを言おうとしている相手に心配されるってどういうプレイだよ。
俺の気持ちが複雑すぎるわ。
「…あ、そうか。もう手遅れだったのか」
ふと気付いて口に出したら、真島の目がキョトンとする。
俺は身体を起こすと、わけわかっていないらしい真島にぐいと詰め寄った。
「あー、くそ。お前が俺に好き好き言って大泣きしまくるから、なんか情わいちまったじゃねーか」
「えっ?ええっ?」
俺の言葉に真島が驚いたように目を丸くする。が、一呼吸置いてその言葉を理解したんだろう。
ぶわっと耳まで赤くなった。
「…う、嬉しい」
おい。どう考えても褒め言葉じゃねーだろ。
情で付き合ってます宣言されて喜ぶ奴なんか、この世にお前くらいだ。
俺は大きく一つため息を吐いた。
最近やたらため息ばっかり吐いている気がする。
それもこれも、全部こいつのせいだ。
俺は詰め寄ったまま、脱力するように真島の頭に手を置いた。
そのまま腰を落とすと、じっとその瞳を見つめる。
さらさらとした真島の髪の毛が、手に心地良い。
そうだ。最初からこうしてればよかったんだ。
「…真島、今から言う俺の話。ちゃんと聞いてくれるか?」
「うん。聞くよ。高瀬くんの話なら、なんでも聞きたい」
素直にそう言った真島に、俺は一度視線を落とす。
だがもう一度目の前の真っ直ぐな瞳を見つめた。
「俺、正直お前と遊びで付き合ってたわ」
真島の目が瞬かれる。
何を言っているんだろう、という顔だ。
「俺は女が好きだし、お前のことを恋愛対象としては見てない。だからお前の気持ちには答えられないし、これから先も別れる未来しか考えてない」
言いながらそっと真島の頭から手を離す。
真島は黙って俺の話を聞いていた。
今コイツは何を思っているんだろう。
騙されたと、こんな奴だと思わなかったと、一気に幻滅しているんだろうか。
「…けど俺はお前に情がわいちまった。だから選んで。こんな考えを持った俺にもう少し遊ばれるか、今ここで別れるか」
俺はマジで性格悪いなと、自分でしみじみ思う。
だが変にわいちまった情のせいで、こいつを酷く自分から突き放すことができなかった。
だからこそ俺の本性を知ってくれれば、真島だってさすがに俺を嫌いになる。
今更傷つけないで別れる、なんてのは無理だが、それでも幻滅して自分から俺を突き放すほうが、真島にとっても未練にはならないはずだ。
また泣かれるんだろうか。
それともさすがに酷いと罵られるんだろうか。
真島の返答に不安になるなんて、こんなのは初めてだった。
「大丈夫だよ。俺は高瀬くんの気が済むまで、ずっと一緒にいるよ」
だからそんな顔しないで、とふわりと微笑んだ真島に、不意に頭を撫でられた。
優しい手の感触は変わらずに熱を持っていて、じわりと心が熱くなる。
酷いことを言っているのは俺の方なのに、なぜだか無性に泣きたくなった。
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