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じりじりとした太陽が照らす八月初旬。
待ち合わせの木陰でまだかよ、とうんざりしていたら、ようやく視界の端にその姿が見えた。
これだけ暑いというのに、全く暑そうに見えない。
真夏に舞い降りた天使か何かかなというような、爽やかな風貌。
さらりと揺れるロングの黒髪に思わず惹きつけられた。
「待った?うめのん」
「…ああいや、今来た所」
仁美ちゃんは俺の言葉に、『良かった』と可愛らしい笑顔を向けた。
どう考えても誘われ待ちだろうというメッセに気付いた俺が、まさか誘わないはずがない。
仁美ちゃんは俺の誘いに一つ返事でのってくれた。
デートコースは予め決まっていて、仁美ちゃんが行きたいと言った水族館へ向かう。
他愛もない話題を振りながら、楽しそうにしてるその姿を下心全開で見つめる。
「わあ、すごい。イルカさん綺麗だね」
「そうだな」
夏休み中でごった返す水族館だったが、仁美ちゃんはアクアリウムを見つめて目を輝かせていた。
ぶっちゃけ前にも女の子と来たことのある水族館だったが、そこは素知らぬふりをする。
「イルカって恋愛するらしいよ」
「え、そうなの?」
仁美ちゃんが目を丸くする。
「頭がいいからかな。まるで人間みたいだよな」
言いながらニコッと仁美ちゃんに笑いかけたら、どこか照れたように顔を俯かせた。
まあこの話元カノから聞いたんだけどな。
実際のところ本当かどうかは知らん。
「…あ、あのね。今日誘ってくれてありがとね」
「え?いや、こっちこそ」
「お祭りも一緒に行けるし、嬉しいな」
機嫌良さそうなその顔に、俺もだよ、と返す。
とはいえ、祭りに関して一番喜んでるのは真島だろうけどな。
亜美ちゃんから情報仕入れたらしく、祭りの話してきた時のあの興奮顔といったらなかなか笑えた。
祭りにも行ったことないとか言ってたし、どんな反応して大喜びするのか今から楽しみだ。
なんて思い出してクスリと笑ったら、仁美ちゃんに不思議そうな顔された。
「あ、ごめん。なんでもない。飯食いに行こうか」
「うん。えっと…どこがいいかな」
「あ、俺行きたいところあるからそこでいい?」
聞いたら、安心したように仁美ちゃんは笑って頷いてくれた。
人も多いし、自然な流れでそのまま手を引く。
ふわりとした甘い香水の香りと、女の子ならではの柔らかい手の感触。
そうだ。どう考えても女の子の方がいいに決まっている。
仁美ちゃんとのデートは終始良い雰囲気で、飯を食った後はウィンドウショッピングに付き合ったりしつつ時間はあっという間に過ぎていった。
大人しめな子だと思っていたが、話してみれば結構明るい子でよく笑う。
女の子の笑顔はそれだけで男のテンションをあげるには充分だ。
そろそろ暗くなってきたし、遠くもないので家まで送ってあげることにした。
帰り道を並んで歩いていたら、仁美ちゃんは上目遣いで俺を見上げる。
「うめのんて女の子にモテるでしょ」
「え、全然そんなことないよ」
「うそ、扱いが慣れてるもん」
「そんなことないけどな。ほら、真島が近くにいるし」
自らチャラ男宣言して自爆するアホはいない。
ここは適当に真島を引き合いに出しておく。
「ふふ、真島くんは特別だもんね。でもああいう高値の花みたいな人って、見てるだけでいいんだよね」
「へー…じゃあもし手に入ったら?」
聞いたら、仁美ちゃんは考え込む。
結局考えるんじゃねーか。
とはいえ実際手に入るならそっちの方がいいはずだ。
夕闇に染まる住宅街は閑散としていた。
昼間に比べて大分気温は下がったが、それでも歩いていればじとりと汗が滲む。
住宅街から漂ってきた晩飯の匂いに、ふと真島を思い出した。
真島は今日部活だと言っていたが、あいつの手料理が食いたいな、なんてぼんやり思う。
と、仁美ちゃんが足を止めた。
「私はでも…うめのんが好きかな」
見降ろしたタイミングで不意に言われて、ドキリとした。
俺を見上げる仁美ちゃんの表情は、どこか小悪魔的な色気を滲ませていた。
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