アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
44
-
仁美ちゃんの言葉に一瞬固まってしまったが、すぐにああ、これは違うなと気付く。
「俺も仁美ちゃん好きだよ」
ニッコリ笑って返す。
どうやら足を止めたそこはもう家の前だったらしく、じゃあまたお祭りで、と続けた。
だが返事は帰ってこなかった。
あれ、と思っていると仁美ちゃんは驚いたようにパチリと目を瞬かせる。
「うめのんて…もしかして天然さん?」
「は?」
言われてから気付く。
え、もしかして今のマジで告白だったのか?
一瞬そうかなとも思ったが、あんまり軽いノリで言われたから冗談、もしくは人として好きっていう意味かと思った。
だって俺を好きだっていう奴の顔はもっと――。
思い出したのは真島の顔だった。
あの全力な泣き顔だとか、真っ赤になって震えながら告白してきたのとか、鼻血出した情けない顔とか。
あんなノリばっかり見てたせいで、何か俺は鈍くなってしまったんだろうか。
少し唖然としていたら、仁美ちゃんは可愛らしく口を尖らせた。
「別にいいもん。じゃあお祭りでお返事聞かせてね」
仁美ちゃんは悪戯っぽい笑顔を俺に向けると、家に入っていってしまった。
女の子の告白をスルーするとか、俺はどうやら頭がおかしくなったらしい。
振られたワケでもないのに、若干気落ちしながら家に帰る。
家に帰り暗い部屋の電気を付けると、みー、と猫が擦り寄ってきた。
猫に飯をやってからソファにバタリと突っ伏す。
「…真島部活終わったかな」
どうやら最近俺は、腹が減ったら真島を考えるシステムになっているらしい。
まあそこは仕方ない。あいつマジで料理うまいし。
いやでもさすがに部活終わって呼ぶのは悪いか。
あいつも疲れてるだろうし。
もうめんどくせーからこのまま寝ようと目を瞑る。
と、スマホが音を立てた。
真島かな、と少し期待してみたら案の定真島だった。
あいつ期待裏切らないな。
「もしもし」
『あ、高瀬くん…その今部活終わったんだけどっ…あのっ、その…』
「いいよ。早く来いよ」
『――えっ!うん!』
すぐ会話は終了した。
俺は最近あいつが言いたいことが分かるようになってきた気がする。
真島エスパーの才能とかいらん。
しばらくしてチャイムの音がして、全力で息を切らした真島が俺の家に来た。
別に走ってこいなんて命令してないんだが。
これから食材を買ってくるという真島を引き止めて、家にあるモンで作らせる。
たいした物無かったはずだが、それでも真島の飯はやっぱり美味かった。
大満足で食い終わって、食器を片付けようとした真島を制する。
「あ、俺今日やるわ。お前部活で疲れてるだろ」
「えっ、ぜ、全然疲れてないよ」
「嘘つけ。いいから座ってろ」
命令口調で言ってやって、食器をキッチンへ持っていく。
洗っていたら、真島がひょこっと顔を出した。
「その、やっぱり俺も…」
座ってろって言ったのに。
だが手伝わないと気がすまないらしい。
それならまあいいか、と何も言わずに再び食器を洗い始める。
真島は隣で人の顔色を伺いながらおずおずと皿を拭き始めたが、不意にギクリと身体を強張らせた。
「え、なに」
ちらっと見上げたら、一気に青い顔をしている。
一体なんなんだ。
だが真島は口を開かない。
「な…なんでもないよ」
明らかに動揺しているくせに、嘘をつきやがった。
なんだよ。ゴキブリでもいたか?
何度か聞いてやったが、真島は余命宣告されたような顔でなんでもないと頑なに口を開かなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
50 / 251