アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
51
-
結局、急遽現れたヒビヤンとその彼女と四人で花火を見ていたが、途中で仁美ちゃんが足が痛いと言ったので、俺と仁美ちゃんだけ先に戻ることにした。
途中にある神社の石段に座らせて、水で冷やしたタオルを渡す。
「ごめんね。花火の途中なのに」
「ああ、いや。大丈夫だよ」
参拝しに来た時とは違い、賑わいは大分落ち着いていた。
みんな花火の方に行っているんだろう。
神社の境内にはちらほら人が見える程度だった。
丁度いいし、俺はさっきヒビヤンに中断された話の続きをしようかなと頭を巡らせる。
が、不意に視界に入った姿に目を見張った。
「――高瀬くん!」
真島だった。
息を切らせて俺の所に来たかと思うと、そのままガシッと手首を掴まれる。
散々走り回って探していたという感じで、俺を捕まえると真島は必死に肩で息をした。
俺を掴んだ手は、逃さないとでも言いたげに力強い。
「えっ、お前なんで…」
「よ、よかった。何かあったのかと思って…俺心配で――」
「心配って…別になんもねーよ」
そもそも俺男だし。心配されるようなことなんか何もない。
というかわざとはぐれたのに、相変わらず鈍いというか察しが悪いというか。
だが真島は本気で心配していたらしく、息を整えながら必死な顔で俺を見ている。
その真剣な顔に、バカだな、なんて思いつつもじわりと心が緩む。
「…て、あれ、お前亜美ちゃんは?」
ふとその傍らに亜美ちゃんの姿が見えない事に気付き、俺は周囲を見回す。
「…あ、その。えと…ちょっと色々あって。先に帰るって」
「…は?」
真島は息を整えながら、どこか気まずそうに言った。
この様子から見ると、恐らく亜美ちゃんは真島に告ったんだろう。
そして真島は断ったと。
確証はないが真島の顔から事情は把握した。
だがちょっと待て。
「…え、お前それでもしかして一人で亜美ちゃん帰したのか?」
「あ、うん。送るって言ったんだけど大丈夫だって。それより俺っ…高瀬くんの事が気になって――」
力強く俺の手首を握りしめる手は、真島がどれほど俺を心配してくれていたかが分かる。
だがそれよりも俺は、真島の言葉に一瞬で頭に血がのぼっていた。
「――っお前!」
ガッと真島の胸ぐらを掴む。
「女の子を夜道一人で帰してんじゃねーよ!危ねーだろうがっ」
「えっ、でもっ…」
「俺の事で周りを適当にする人間になるな!そんなことされても嬉しくねーんだよ」
「た…たか――」
真島が俺を好きなのは知っている。
だが、それのせいでこいつの視野が狭くなるのは嫌だった。
亜美ちゃんはどうせ真島に振られて『大丈夫』と強がったんだろう。
それを鵜呑みにしてこんな祭りでナンパする奴も多い中、一人で帰すなんて最低野郎じゃねーか。
「お前仁美ちゃんと一緒にいろ。俺追いかけるから」
「あ…っ、あの――」
俺の態度に怯えたような顔で何か言いかけた真島を突き放す。
が、真島が俺を掴んだ手首は外れなかった。
暑いはずなのに妙に冷たくなった手が、しっかりと俺を掴んでいる。
「離せよ」
冷めた声音で言ったら、震える手がゆっくりと緩む。
俺はそれを振り切ると、ダッシュで亜美ちゃんを探しに戻った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
57 / 251