アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
53
-
亜美ちゃんを駅まで送り届けてから、すっかり終演ムードになっている駅通りに目を向ける。
花火が終わってから時間も経っているし、店じまいをしている屋台も目立つ。
さすがに真島も仁美ちゃんも帰ったかなと思いながら、とりあえず真島に電話を掛けることにした。
さっき怒鳴った事もあって少しためらったが、それでも一緒に来てる以上そのままには出来ない。
少しスマホを見つめてから、俺は潔く通話アイコンを押した。
『あ、あのっ――』
ずっとスマホを見てたんだろうか。
呼び出し音もせずに一瞬で出た真島が、開口一番何かを言いかけた。
が、息を詰まらせたように、次の言葉が聞こえてこない。
掛けたばかりなのに、いきなりシンと気まずくなった通話に思わず首を擦る。
「…あー、いいか?話して」
電話の最初は普通『もしもし』とかじゃないんだろうか。
こんないきなり切羽詰まってこられるとは思わなかった。
真島の返事はいまいち聞こえてこなかったが、俺は構わず言葉を続ける。
「…とりあえず亜美ちゃんは送ってった。お前まだ仁美ちゃんといんの?」
『い、いないよ。今一人』
「はぁ?ちゃんと送ってったんだろうな」
『あっ、お、送ってったよ!ちゃんと送っていったから――』
だからもう、怒らないでと真島に言われたような気がした。
実際はなんかグズグズ言ってて聞き取れなかったが。
というかもしかしてコイツも泣いてんのかよ。
どっちが振られたんだか分かんねーな。
「今どこ?もう帰った?」
『あ、えっと…』
真島が言い淀む。
なんだよ、とは思ったが少し待っていると、おずおずと言った感じで真島の声が再び聞こえた。
『その、さっき高瀬くんに怒られた所に…います』
「は?なんでまたそんなとこに戻ってんだよ」
『た…っ、高瀬くんがもしかしたら戻ってくるかもって…っ』
言いながら、また息を詰まらせる。
こんな捨てられた犬みたいになってる奴に、今更説教する気も小言いう気も起きない。
むしろ俺が悪いことしたみたいな気になってくる。
え、俺悪くないよな。
「分かった。じゃあ今からそこ行くから、ちょっと待ってろ」
『えっ――でも』
真島は何か言いかけてたが、電話を切ると俺は再び神社へと足を向けた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
59 / 251