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夏休みが終わり、また通常の学校生活へと戻る。
俺と真島は相変わらずで、屋上の壁を背にした日陰で二人で飯を食っていた。
まだ暑さの残るその場所だが、真島は全くその雰囲気を感じさせず、しばらくぶりの制服姿は眩しいほどに爽やかだ。
「なんかお前と久々な気が全然しねーな」
「…その、高瀬くん俺にたくさん構ってくれたから。夏休み、俺すごく楽しかったよ」
真島が嬉しそうに顔を綻ばせる。
確かに夏休み後半なんか特に、ほとんど真島にメシ係をやらせていた気がする。
結局課題もやってもらったし、真島使いが荒くなっているのは否めない。
だってこいつ色々便利だし。
真島特製ミートボール弁当を食い終わって、壁を背にしたまま寝ようかなと欠伸をする。
目を閉じたら、耳やら髪の毛やらに触れてくる真島の手の感触。
夏祭り以降、なんかタガが外れたようにやたら触ってくる真島だったが、俺は好き勝手にやらせていた。
多少触ってくるくらいなら何の問題もないし、むしろ我慢させてると後々俺が痛い目を見る。
男の力全開で抱きしめられた夏祭りの夜を思い出せば、いまだにギシギシと骨が軋むような身体の痛みが蘇ってくる。
だが触られることに慣れてしまって何も言わなくなると、それはそれでさらにエスカレートしてくる。
「あ…おい、ちょっ…」
「ん、大丈夫だから。寝てていいよ」
真島は俺を引き寄せると、後ろからぎゅうと抱きしめてくる。
一体何が大丈夫なんだ。
くっそ暑苦しいのに寝れるか。
だが力任せじゃなく、まるで俺を甘やかすかのように優しく触れる手はどこか心地良い。
そう、これくらいの力強さで触れてくれるなら俺も別に――。
「いやちょっと待て」
ぐい、と真島を引き剥がす。
忘れてた。ここは家じゃねーんだ。
「おい。学校で必要以上に触るの禁止な」
「――え!?」
真島が一瞬にして玩具を取り上げられた子供のように、愕然と表情を変える。
「当たり前だろ。誰かに見られたらどうすんだよ」
「お、俺は全然気にしないよ」
「俺は気にするから無理」
ピシャリと言ったら、真島は衝撃を受けたようにガクリと肩を落とした。
当たり前だろーが。ホモ疑惑ついたらどうしてくれるんだ。
俺の高校生活、一瞬で女の子と遊べなくなる。
まだ縋り付こうとしてくる真島をじろりと目で牽制して大人しくさせる。
前は俺に触るのもビクビクしてたくせに、あまり飴を与えすぎるのはよくないのかもしれない。
だがこいつがしょげている顔を見ると、なぜか機嫌取ってやるかという気になるから、情って恐ろしい。
さて、夏休み明けの行事といえば、今月末にある文化祭だ。
昼休みを終えて教室へ戻ると、まだ日に焼けたままのヒビヤンが既に後ろの席に戻ってきていた。
「なぁ高瀬、文化祭だぞ。文化祭」
なにか浮かれている。
人が椅子に座った瞬間、乗り出すように好機の目を向けてきた。
正直イベント事とかめんどくさすぎてやる気ないんだが、ヒビヤンはやる気満々らしい。
「なんだよ。なんかやりたいことでもあんの?」
「ある。コスプレ喫茶にしようぜ。女子に水着とかナース服とか着せんの。最高じゃね?」
「最高だな」
ヒビヤンとガシッと手を組む。
今日の五限はHRになっていて、文化祭について決めることになっていた。
俺とヒビヤンはクラスの男子を巻き込んで、コスプレ喫茶を推すことに決める。
HRが始まると、まず最初に文化祭実行委員を決める話になったが、やりたい奴がいなくて全く決まらなかった。
面倒くさいからヒビヤンを推薦してやろうかと思ったが、逆推薦されても怖いので素知らぬ顔をして窓の外を眺める。
キャーと聞こえる歓声に、グラウンドで活躍するへたれスーパースターの姿を見つけた。
自然と目で追いかける。
「はい、高瀬くんがいいと思います」
すぐ真後ろで聞こえた声。
おい、ふざけんな。
ならば、とこっちこそ逆にヒビヤンを推薦してやろうと思ったのに、グダグダすぎてみんな飽きまくっていたので一瞬で拍手が湧き上がった。
「は?いやマジで無理なんだけ――」
「うん、いいね。高瀬は友達も多いし、文化祭実行委員は人と多く関わる仕事だからね。先生も向いていると思うよ」
トドメとばかりに初老の担任に推された。
俺の無理だという声も虚しく、半ば押し付けられるように文化祭実行委員に任命されてしまった。
クラスで一人という低確率に当選するとか、俺の夏休み明けの運気は絶不調らしい。
というかヒビヤンマジで覚えてろ。
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