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こうなったら絶対コスプレ喫茶にはしてやるという執念のおかげで、無事俺のクラスの出し物はコスプレ喫茶に決まった。
その後細々としたものを決めて、首尾よく文化祭についての話し合いは五限目中に終了した。
「おいてめえ」
胸ぐら掴んでやろうかという勢いで、じろりと後ろを振り向く。
ヒビヤンは全く悪気のない顔で、両手を顔前にあげた。
「まあまあ、別に夏休みの課題見捨てたのとか根に持ってねーから」
思いっきり根に持たれていたらしい。
というか結局貞男を脅して手伝わせてたからいいだろうが。
そもそも自分が散々遊んでたのが悪いくせに、コイツは何を言っているんだ。
まあ今さら決まってしまったものをグダグダ言っても仕方ない。
俺はげんなりと肩を落として視線を前に戻した。
文化祭実行委員の集まりはさっそく放課後にあるらしく、バイトもあるというのに俺は特別棟の会議室まで足を運ぶことにした。
鞄を持って教室を出たら、真島が待っていた。
これから部活に行くんだろう。
「おう。部活頑張れよ」
ポンと肩を叩いて、そのまま特別棟へ向かうためその前を横切る。
「あれ?か、帰らないの?」
いつもと逆方向に歩く俺を不思議に思ったんだろう。
真島が雛鳥のようにひょこひょこ着いてくる。
「文化祭実行委員になっちまったんだよ。ヒビヤンのせいで」
真島に目を向けぬまま超絶テンションの下がった口調で返したら、ええっ、と悲鳴に近い声が返ってきた。
「…お、俺もやればよかった」
そんなにやりたいならいくらでも変わってやる。
人の後を追いかけながら勝手に落ち込み始めた真島を、鬱陶しいとシッシッと手で追い払う。
「…あ、でもうちのクラスの実行委員ユキだよ。高瀬くんとユキ仲良しだから…知り合いがいて良かったね」
「え、マジ」
まあ知ってる奴が誰もいないよりはいいが、それよりコイツは俺と貞男の関係を完全に誤解している。
面倒だからあえて訂正もしないが。
さっさと部活行けと促してんのに、少しでも見ていたいと、結局真島は特別棟まで着いてきた。
特別棟は前に真島と実習室で弁当を食った以来だが、相変わらず辛気臭い静寂に包まれている。
「あれ、うめのんだー」
が、そこに全くそぐわない呑気な声が廊下に響いた。
振り返り、そこに立っていた姿に少し驚く。
最後に会ったのはいつだったか。
学年違うから、会わなくなると全く会わない。
「あれえ、もしかしてうめのんも実行委員なの?超奇遇じゃんー」
相変わらずマイペースで人懐っこい性格をしている。
くるくる巻の茶髪と、少し派手目のメイク女子。
「…久々ですね。ミカ先輩」
今日は本当に不運だ。
あんまり会いたくない奴にまで会った。
ミカ先輩は俺の反応なんて相変わらず気にしてない様子で近づいてくると、馴れ馴れしくも俺の腕を取る。
「会いたかったー!もう、あれ以来全然来てくれないんだもん」
「…先輩も変わらないですね」
会いたいとか嘘つけ。
内心でそう思っていたら、真島に逆側の腕を引かれた。
「お…お友達?先輩にも友達いるんだね」
どうやら笑顔を作ろうとしているらしいが、思いっきりその顔は引きつっている。
ポーカーフェイスの才能ないな、コイツ。
不安が顔に出まくっている。
とはいえヘタに隠すほうが真島の機嫌を損ねるかなと俺は判断して、口を開く。
「まあ、友達っつーか。元カノ」
「――えっ」
「じゃーな、真島。部活頑張れよ」
何か固まっている真島にそう言って、俺は人を引っ張るミカ先輩と一緒に会議室へ足を進めた。
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