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会議室には既に全学年各クラス一人の文化祭実行委員がちらほらと集まっていた。
「ねーねー、今の真島くんでしょ。仲良いんだ」
「いえ、全然仲良くないです」
「その言い方は嘘だー」
ピッタリ人の腕を掴んで隣でブーブー言ってる先輩は置いといて、教室内を見回す。
「あ、いた」
「げっ」
貞男と目が合った。
そして物凄く嫌そうな顔をされる。
というか開口一番それかよ。
「え、誰?ちょー美人。今カノ?」
「いやあいつ男なんで。てか先輩ついてこないで下さいよ」
「なんでよ。また仲良くしようよー」
せっかくだし貞男の隣に座ってあえて嫌がられてやろうと思ったのに、ミカ先輩が縋り付いてきて鬱陶しい。
お前は真島か。
いや、俺のことを全く考えてない辺り、この人は真島とは全然違う。
だが幸運なことに席順は学年別だったので、俺はさっさと先輩を剥がして貞男の隣に座った。
「おい。誰だよあの女は。奏志にチクるぞ」
「さっき一緒にいたからもう知ってるよ。元カノ」
「…は?お前ああいうのが好きなのかよ」
どう考えても貞男とミカ先輩は相容れない気がする。
ああいう軽いノリの女子は苦手そうだし。
そもそも特進科にあのタイプの派手目の女子はいない。
「どう見ても頭悪そうな女だな。つかお前さっき奏志と一緒にいたって、奏志の前で軽々しくあの女と…っておい。お前何寝ようとしてんだよ」
グダグダ追求されそうな雰囲気だったから片肘付きながら目を閉じたら、貞男に肩を揺さぶられた。
「貞男、俺の代わりに話聞いといて。会議終わるまで寝るわ」
「――はっ?なんで俺がお前のために…」
何か言っていたが気にせず目を閉じる。
バイトのために体力温存だ。
貞男は意外に面倒見いいから、なんだかんだきっとやってくれるだろう。
『一人でいるのが嫌なんでしょ』
――部屋は真っ暗だった。けどその手には暖かさがあって、誰かがいるとなぜか安心した。
『寂しくなったら、いつでも呼んでね』
形の良い唇が弧を描く。
『大丈夫。私も一緒だよ』
全然違う。一緒なんかじゃない。
だが抗えない何かに手を引かれて、いつだってぐらりと意識が揺らぐ。
「うーめのん」
ハッと目を開ける。
ミカ先輩が俺の顔を覗き込んでいた。
マスカラぱっちりの目はくるりと大きい。
ちょっと化粧濃いが顔は可愛いんだよな。
「もう終わったよ。ずっと寝てたの?」
「あー…爆睡してた」
本気で爆睡してたせいで回らない頭を軽く振る。
久々に会ったからか、思い出したくない夢を見た気がする。
ミカ先輩はくすりと笑った。
「ね、これから遊びに行こうよ。久々に会ったんだし。いいでしょ?」
「は?」
俺はこれからバイトだ。
普通に断ろうと思ったら、横からさっと顔の前に手が伸びてきた。
「コイツ忙しいんで無理です。――お前ちょっと来い」
そして突然貞男に腕を掴まれる。
寝起きすぎてまだぼけっとしている所、強引に貞男に腕を引っ張られて教室を連れ出された。
人気のない階段の踊り場まで来ると、壁に押し付けられる。
壁ドンだ。
あれ、こいつに壁ドンされるの二回目じゃね。
だが相変わらずその表情は酷い剣幕だ。
「お前あの女とヨリ戻すつもりかよ」
「…はぁ?戻さねえけど」
なんでそんな事を貞男に聞かれなきゃいけねーんだ。
というかさっきコイツ、人の誘いを勝手に断ったよな。
「なら奏志を悲しませるような行動を取るな」
「取ってねえだろうが。あれは先輩が勝手に…」
「来る時腕組んでただろ。奏志の前でよくそんな事させたな、お前」
貞男が軽蔑するような視線を送ってくる。
思い返せば確かに真島は不安そうだったが、あの状況では不可抗力だろ。
見てもいない癖に、コイツにそこまで追求される言われはない。
「いいか。お前が奏志と別れないなら、あの女を近付けさせるな。奏志が悲しむ」
「俺は別にミカ先輩と仲良くする気はねーよ。向こうが勝手に寄ってくるだけだし」
「は?断れよ。近づくんじゃねーとか言えよ」
「言えるか。俺はどんだけ偉いんだよ」
なんでわざわざ波風立てる言い方しなきゃいけねーんだ。
理不尽な貞男にじとっと目を細めたら、貞男はぐっと唇を噛み締めた。
余程真島に悲しい思いをさせたくないんだろう。
「…分かった」
「は?」
「適当なお前に何かを求めた俺が間違いだった。もう勝手にやらせてもらう」
コイツは一体何を言い出しているんだ。
だが貞男は何か決意したように、俺を見据えた。
「あの女がお前に近づかないよう、俺がお前を守ってやる」
え、かっこいい。
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